制御設計の年収と転職の実例|FAのソフト会社から装置メーカーへ移った3年で何が変わったか

はじめに:転職前に何より知りたかったのは給料だった

自分は18歳からFA(ファクトリーオートメーション)の業界にいて、業界歴は7年になります。前の会社はFAのソフト会社で、タッチパネル(GOT)の画面制作から入り、PLCのソフトも担当して4年勤めました。今は自動装置(自動機)のメーカーにいて、転職して3年目です。

先に断っておくと、これは「未経験からの転職」の話ではありません。同じFA業界の中で、ソフト会社から装置メーカーへ移った転職の話です。ソフトだけをやっていた人間が、制御盤のハードから試運転までを一式持つ側に移ったらどうなったか、という実例として読んでください。

転職を考えていたとき、自分が何より知りたかったのは給料でした。家族が最優先で、仕事そのものは「やるしかない」と思っていたので、年収がどう変わるのかだけが気になっていた。でも、自分が探した範囲では、制御設計の年収を本人の口で書いた記事は少なかった。だからこの記事では、年収の幅と、その中身、1日の働き方、新人が何から始めるのかを、自分の経験の範囲で隠さず書きます。

年収はどう変わったか:300万円台から3年で600万円前後

前職のソフト会社では、年収は300万円台でした。今の会社に移って3年で、600万円前後まで上がりました。実数は書きませんが、幅としてはこのくらいです。

ただ、「転職したら年収が大きく上がった」とだけ書くと盛った話になるので、中身を分けて書きます。

1年目:盤組の期間は残業ゼロ

入社してしばらくは、盤組(制御盤の組立)を担当していました。この期間は残業がゼロでした。年収が上がった実感が出るのは、盤組を離れて設計に移ってからです。

2年目以降:設計に移って残業が増えた

2年目からは社内での設計がメインになり、残業が増えました。今の会社は残業代が実績払いで、固定残業代ではありません。働いた分がそのまま乗る形です。

つまり「年収が上がった」の中身は、基本給が上がったことと、設計に移ってからの残業代の両方です。残業なしで600万円前後になったわけではない、というのは正直に書いておきます。

制御設計の1日と、装置1台ができるまでの流れ

出勤は9:00、退勤は平均で21:00くらいです。忙しくない時期は18:00に帰れる日もありますが、基本的には忙しい。複数の案件を同時に進めているので、ひとつの案件が落ち着いても次が待っている、という状態が続きます。

出張は月5日ほどで、実態は社内での設計がメインです。制御設計というと現場を飛び回るイメージを持たれることもありますが、自分の場合は机の前にいる時間のほうが長いです。

担当している仕事の範囲

今の担当は、制御盤設計、制御盤のCAD製図、PLCソフトの設計製作、GOTソフトの設計製作、配線工事、試運転、立ち上げまで一式です。前職ではPLCとGOTのソフトが中心だったので、ハード側は転職してから覚えました。

装置1台の工程

装置1台を仕上げるまでの流れは、だいたい次の7つです。

  1. 見積
  2. ハード設計
  3. 手配(盤組・部材)
  4. ソフト設計製作
  5. 配線工事準備
  6. 配線工事
  7. 試運転・立ち上げ

盤組は今は外注に出しています。ソフト設計製作では自分は三菱の GX Works3 を使うことが多く、命令語で詰まったときに引けるように【GX Works3】命令一覧・早見表(iQ-R)|ラダー命令語の使い方まとめをまとめています。

新人はまず盤組から:配置図が描けないから

今の会社では、新人はまず盤組を経験することになっています。理由は単純で、盤組を経験していないと、ハード設計で盤内の配置図が描けないからです。機器の大きさや配線のスペース、ダクトの通し方を手で知らないと、図面の上で辻褄の合わない配置を描いてしまう。

これは自分がいる1社の例です。他社がどうしているかは分かりません。

盤組1ヶ月目に分からなかったこと

ソフト会社に4年いた自分でも、盤組の1ヶ月目はこのくらい分からないことだらけでした。

  • Y端子と丸端子の使い分け
  • マークチューブ(線番)の向きが「読み上げ」だと知らなかった(会社ごとに作法が違う)
  • ドリルの使い方
  • プラスドライバーの番号(数字)の意味
  • 機器の配線をどこに繋げばいいか
  • 24V(制御電源)という概念
  • 電線のサイズを何にするか(許容電流)
  • 配線ダクトで制御線と動力線を極力分けること
  • アースは機器間を渡らせず、機器ごとに盤のアース端子へ繋ぐこと(渡ればいいと思っていた)
  • はんだ付けが難しく、やけどをした
  • インシュロック(結束バンド)を切った後のバリで擦り傷をした
  • 200Vで感電して痛かった
  • 聞ける環境だったので先輩に聞きながら覚えた。失敗して学んだこともある

電線のサイズは、今はKIV・IV電線の許容電流一覧|サイズ別の代表値まとめ【制御盤設計向け】にまとめているような表を見れば済む話ですが、当時は「許容電流」という言葉の意味から分かっていませんでした。制御線と動力線をダクトで分ける話も、何のために分けるのかを知ったのは手を動かしてからで、制御盤の配線を整理する方法|ダクト・結束・整線の現場ルールを解説に書いたことの大半は、この時期に先輩に教わったか、失敗して覚えたことです。

ソフト会社の1ヶ月目も同じだった

ちなみに、前職のソフト会社に入った1ヶ月目も似たようなものでした。GT Designer3 の使い方が分からず、「デバイスはこれにして」と資料だけ渡されても、その資料の読み方が分からない。基礎は教わり、三菱のマニュアルを見ながら操作して、聞きながら作っていました。どちらの会社でも、最初の1ヶ月は「聞ける環境かどうか」で決まった気がします。

採用で見られたのは人柄と若さ

入社してから聞いた話ですが、採用基準は人柄だったそうです。「結局は人」。仕事を持ってくるのも、手配してくれるのも人だから、という理由でした。あとは若さ。資格や電気の知識は、入口では問われませんでした。

年齢について(本人の感覚・1社の範囲)

ここからは自分の感覚で、しかも1社の範囲での話です。未経験から入るなら40代までが限度ではないかと思っています。周りで業界に入った人は20代ばかりで、30代はあまり見ません。できる人は、20代からこの仕事をやっている人が多いです。結局は経験がものを言う仕事だと思っています。理解力も大切ですが、若いうちに入るほど覚えが早く、固定観念が少なく、人の言葉を素直に聞けるのも効いていると感じています。

同じ会社には、無職や派遣社員から20代で入って、今は自分より技術力も年収も上の人がいます。入口の経歴よりも、入ってからどう覚えたかのほうが効いている、というのはその人を見ていて思うことです。

よかったこと、後悔していること

よかったこと

年収が上がって生活水準が上がり、家族を養えていること。これが転職の目的だったので、そこは達成できました。もうひとつは、会社の人が優しく手を差し伸べてくれること。社長が面接で人柄を見ているからだと思っています。自分もそうやって採られた側なので、周りに同じような人が集まっているのは納得がいきます。

後悔していること

忙しくて帰りが遅く、家族との時間があまり作れていないことです。年収を上げたかったのは家族のためなのに、その家族と過ごす時間が削れているのは矛盾していると自分でも思います。今は作業効率を上げて早く帰れるように、やり方を試行錯誤しているところです。

まとめ:転職前の自分に言うなら

  • 年収は300万円台から3年で600万円前後。ただし中身は基本給の上昇と、設計に移ってからの残業代の両方
  • 1日は9時〜21時が平均。出張は月5日ほどで、実態は社内設計がメイン
  • 新人は盤組から。盤組を知らないと配置図が描けない(1社の例)
  • 採用で見られたのは人柄と若さ。資格や知識は入口で問われなかった

この記事は、1人・1社の例です。同じ制御設計でも会社が変われば年収も働き方も変わるはずなので、幅のある話として受け取ってください。転職の準備そのもの(資格の棚卸しや書類)は電気系で転職するなら何を準備するか【資格・書類・サービスの使い方】に分けて書いています。

最後に、転職前の自分に一言だけ言えるなら、こう言います。

「転職して間違いじゃなかったよ。安心して、大丈夫」