制御盤のノイズフィルタ:インバータ・サーボ周りで誤動作を防ぐ取り付け方
「インバータを入れたらPLCが誤動作する」は現場あるある
インバータやサーボドライバを制御盤に組み込んだ後、PLCの入力が勝手にオンになる・通信エラーが出る・センサーが誤検知するといったトラブルが起きることがあります。原因の多くはインバータ・サーボのスイッチングノイズです。
ノイズフィルタはこのようなノイズが電源ラインや信号線を伝わって広がるのを抑えるための機器です。この記事では制御盤でのノイズフィルタの種類・設置位置・アース配線の考え方を整理します。
制御盤全体の構成については制御盤の中に何が入っている?主要機器の役割と配置をざっくり整理を参照してください。
制御盤でよく使うノイズフィルタの種類
EMCフィルタ(ラインフィルタ)
電源ラインに入れるフィルタです。コモンモードチョーク(インダクタ)とYコンデンサ・Xコンデンサで構成されており、高周波ノイズを電源ラインへの流入・流出の両方向で抑えます。インバータの電源入力側に取り付けるのが基本です。
メーカー(三菱・富士電機・TDKラムダ等)がインバータに対応したEMCフィルタを指定している場合が多く、インバータのカタログに「推奨ノイズフィルタ」が記載されています。指定品を使うのが最も確実です。
フェライトコア(クランプコア)
配線に後付けで取り付ける円筒形または半割形の部品です。高周波ノイズを吸収します。既存の配線に追加できるため、現地でのトラブルシュートに使いやすいです。パワーラインよりも信号線・通信ケーブルへの使用が多いです。
サージアブソーバ・バリスタ
電源ラインへのサージ(雷・開閉サージ)を吸収します。屋外設備への引き込みや、誘導性負荷の近くに設置します。リレーコイル・電磁弁のコイルに並列に入れるスナバ回路もこの目的です。
設置位置の考え方
ノイズフィルタの効果は設置位置に大きく左右されます。
インバータ用EMCフィルタの設置位置
EMCフィルタはインバータの電源入力端子(R・S・T)のできるだけ直近に設置します。フィルタとインバータの間の配線が長くなると、その間でノイズが放射されて効果が下がります。
フィルタ入力側(電源側)とフィルタ出力側(インバータ側)の配線は互いに離して配線します。両方の配線が束なっているとフィルタを迂回してノイズが伝わります。
パワーサプライとの関係
パワーサプライ(スイッチング電源)自体もノイズ源になります。品質の良いパワーサプライは内部にEMCフィルタを持っていますが、インバータと同じ電源ラインから引いている場合は、ラインフィルタを電源入力部に入れることでDC24V系への影響を減らせます。
パワーサプライの仕組みについてはパワーサプライとは?初心者向けに仕組みと役割をやさしく解説も参考にしてください。
アース配線との関係
ノイズフィルタの効果は正しいアース(接地)配線があって初めて発揮されます。
- EMCフィルタのアース端子は盤の金属板(Eバー)に短くて低インピーダンスの配線で直接接続する
- インバータのアース端子も同様に盤の金属板に短く接続する
- アース線を長くしたり、他の機器のアースと一緒にまとめて長いアース線で引き回すと高周波での接地インピーダンスが上がり効果が落ちる
「アースを取っているのに効かない」の原因の多くは、アース線が長い・細い・共用しすぎているケースです。EMCのアースは直流の安全アースと目的が異なるため、高周波インピーダンスを下げることが大事です。
ノイズ対策の優先順位
ノイズ対策は「発生源を抑える」「伝播を防ぐ」「受信側の耐性を上げる」の3段階で考えます。
- 発生源対策:インバータに指定の入力フィルタを取り付ける。出力側にも指定フィルタがある機種は使う
- 伝播対策:電源ライン分離(動力電源と制御電源を別系統にする)。シールドケーブルの使用。フェライトコアの追加
- 受信側対策:PLCのアナログ入力・通信ポートへのシールド接続確認。センサーケーブルのシールド接続
後付けでフェライトコアを追加することも効果がありますが、設計段階でEMCフィルタを適切な位置に入れておくのが最もコスト効率が良いです。
まとめ
制御盤のノイズフィルタに関する要点です。
- EMCフィルタ:インバータ電源入力直近に設置。メーカー指定品を使う
- 設置位置:フィルタとインバータ間は短く。フィルタの入出力配線は離して配線
- アース配線:フィルタ・インバータのアースは盤金属板に短く直結。長いアース線は効果を下げる
- ノイズ対策は設計段階で組み込むのが最もコストが低い
