技能試験の合否判定基準:欠陥の種類と見落としやすいポイント
「どこまでなら大丈夫か」が一番気になるポイント
技能試験で最も不安になるのは、配線の仕上がりを自己採点する場面だ。「この剥き寸法は短すぎないか」「圧着マークがズレているかもしれない」――こういった不安は、欠陥の判定基準を正確に理解していないと試験当日まで続く。
この記事では、技能試験の合否を決める「欠陥」の考え方と代表的な欠陥項目を整理し、現場経験者が特に引っかかりやすいポイントを具体的に解説する。試験センターが公表している判定基準をベースに、現場目線の補足を加えていく。
技能試験の全体像(候補問題の構成・試験時間など)は第二種電気工事士の技能試験とは?候補問題・判定基準・試験時間を整理にまとめているので、まず全体を把握しておくと理解が深まる。
合否判定は「欠陥が1つでもあれば不合格」
まず大前提として、現行の技能試験は欠陥が1つでもあれば不合格だ。試験センターは合格基準を「作品に欠陥がないこと」と明言しており、判定は公表資料「技能試験における欠陥の判断基準」に基づいて行われる。
注意したいのは、古い参考書やWeb記事に残っている「重大欠陥は1つで不合格・軽欠陥は2つまで許容」という解説だ。これは2017年度(平成29年度)より前の旧制度の話で、現行の判断基準に重大・軽微の区分は存在しない。「軽微なミスだから1つくらい大丈夫」という自己判断は現行制度では通用しないので、すべての欠陥をゼロにする前提で練習する必要がある。
欠陥に該当する主なケース
判断基準に挙げられている欠陥のうち、代表的なものを整理する。以下のどれか1つでも該当すれば不合格となる。
- 未完成(配線が途中で終わっている、接続が1箇所でも未完了)
- 配線・器具の配置が配線図と相違(単線結線図と異なる回路になっている)
- 誤接続・誤結線
- 電線の種類の誤り(指定と違うケーブルを使った、など)
- 電線の色別・器具の極性が施工条件と相違(接地側・非接地側の逆接続)
- リングスリーブの選択誤り・圧着マークの不適正(サイズ違い・刻印違い・マークなし)
- 差込コネクタの挿入不良(先端から心線が見えない・下端から心線が見えている)
- 器具への結線不良(心線をねじで締め付けていない・電線を引っ張って外れる・絶縁被覆の締め付け)
- 電線の損傷(折り曲げたときに心線が露出する被覆の傷、など)
現場では「まあ通電するから問題ない」という判断が通ることもある。しかし試験では「回路が正しいかどうか」だけでなく「施工のルールを守っているか」が問われる。通電する回路であっても、電線の種類が指定と違えば欠陥になる。
逆に「欠陥としない」と明記されているもの
判断基準には、欠陥にならないケースも明記されている。たとえば次のようなものだ。
- リングスリーブの下端から10mm以内の絶縁被覆の傷
- 心線が露出しない程度の浅い被覆の傷(欠陥になるのは「電線を折り曲げたときに心線が露出するもの」)
「1つでも欠陥があれば不合格」と聞くと極端に厳しく感じるが、判断基準の各項目には数mm単位の許容値が具体的に示されている。怖がって手が止まるより、どこからが欠陥なのかを数値で把握しておくほうが実戦的だ。
現場ではOKでも試験ではNGになる具体例
現場経験がある人ほど「これくらいは問題ない」という感覚で施工しがちだ。しかし試験の判定基準は現場の慣習とは別物で、具体的な数値と規格で決まっている。以下に特に引っかかりやすい例を挙げる。
圧着マークの違い
現場でリングスリーブを圧着するとき、使う工具の状態や作業者の癖でマークが多少ズレることがある。現場なら「ちゃんと圧着できていれば問題ない」で通ることも多い。しかし試験では、圧着マークが指定と異なる刻印になっていると欠陥になり、それだけで不合格だ。
- 小スリーブに「○(極小)」を使うべき箇所で「小」が刻印された → 圧着マーク不適正で欠陥
- 中スリーブの接続で「小」を刻印してしまった → 同じく欠陥
圧着工具には「○・小・中・大」の刻印ダイスが対応している。電線の本数と太さの組み合わせに対して使うスリーブと刻印が決まっているので、この対応表は必ず暗記しておく必要がある。
被覆の剥き寸法
器具への接続(ランプレセプタクルや端子台など)では、心線を露出させる長さに基準がある。現場では「だいたいこれくらい」という感覚で剥くことが多いが、試験では器具ごとに目安の寸法がある。
- ランプレセプタクル:ネジ端子に心線が1周しっかり巻き付く長さ(20mm前後が目安)
- 引掛シーリング・露出形コンセント:器具の差込口に合わせた長さ
- 差込コネクタ:コネクタの窓から心線が見える程度(12mm前後)
短すぎると接触不良・抜けの欠陥になり、長すぎると心線の露出(例:リングスリーブの下端から心線が10mm以上露出)で欠陥になる。現場では「まあ繋がれば」で許容される場合もあるが、試験では測られる意識で剥くこと。
差込コネクタへの挿入の深さ
差込コネクタは現場でもよく使う器具で、「刺せばOK」という感覚になりやすい。しかし試験では、コネクタの先端部分を真横から見て心線が見えないもの、逆に下端部分から心線が見えているものは欠陥と判定される。
コツは、コネクタの窓から心線の先端が見えるまで挿し込むこと。ケーブルの被覆に傷をつけないように慎重に挿すことも意識したい。
被覆の傷
現場では電工ナイフやストリッパの使い方が多少雑でも「通電に支障なし」として問題にならないことがある。試験の判断基準では、絶縁被覆の損傷は「電線を折り曲げたときに心線が露出するもの」が欠陥とされている。心線が露出しない浅い傷なら直ちに欠陥にはならないが、傷が深ければ折り曲げ確認で心線が顔を出し、その時点で不合格だ。傷の深さを自分で正確に見極めるのは難しいので、「傷をつけない剥き方」を身につけるのが結局いちばん安全だ。
ストリッパの刃のセット位置を正確にして、一発で綺麗に剥くことを練習で身につけておく必要がある。
ランプレセプタクルの極性
現場では「スイッチで切れていれば極性は気にしない」という場面もある。しかし試験では、ランプレセプタクルの接地側(Wマーク)に白線(接地側)を接続する極性の正確さが厳しく見られる。逆に接続すると「器具の極性が施工条件に相違」で欠陥になる。
試験直前に確認すべき「自己採点ポイント」
作業完了後、試験では数分の見直し時間が生まれることがある。限られた時間でチェックすべき箇所を優先順位で整理しておく。
- 回路の正確さ:単線結線図と照らし合わせ、接続の過不足がないか
- 圧着マーク:スリーブと刻印の組み合わせが合っているか、全箇所に刻印があるか
- 差込コネクタ:全ての電線が奥まで挿さっているか、引いても抜けないか
- 極性:ランプレセプタクル・引掛シーリング等の白線(W側)の確認
- 被覆の状態:スリーブや器具の端子部分で被覆を噛み込んでいないか
欠陥は1つでも不合格なので、「どれか1つ見逃してもいい」という余裕はない。影響の大きい回路の正確さから順に、全項目をゼロにする意識で見ていく。
まとめ
技能試験の合否は「欠陥の有無」によって決まる。判定の仕組みと、現場感覚との乖離を事前に把握しておけば、試験本番の余計な不安を減らすことができる。
- 欠陥が1つでもあれば不合格:合格基準は「作品に欠陥がないこと」。回路の誤り・圧着マーク違い・極性逆・電線種類ミスが代表例
- 旧制度の「軽欠陥は2つまで許容」は現在は通用しない:重大・軽微の区分は2017年度以前の話。古い解説に注意
- 現場感覚をリセットする:「通電すればOK」ではなく「規格通りか」を基準にする
- 剥き寸法・圧着マーク・差込の深さは練習段階から数値を意識して体に染み込ませる
一次情報は試験センター公表の「技能試験に係る欠陥の判断基準等について」(欠陥の判断基準・技能試験の概要と注意すべきポイント)を必ず確認してほしい。
