圧着工具の選び方と使い方:技能試験に通る圧着マークの基準
圧着マークのミスが、技能試験で最も多い失点になる理由
技能試験の採点では「欠陥」として扱われる施工ミスが複数ある。そのなかでも圧着工具に関するミス——スリーブのサイズ選択ミス・ダイスの選択ミス・圧着マーク不鮮明——は毎年多くの受験者が引っかかるポイントだ。
現場でリングスリーブを使い慣れている人ほど注意が必要で、「なんとなく感覚でやっている」やり方が試験では通用しない。圧着マークが一文字でも違えばそれだけで欠陥になる。
この記事では、試験で使うリングスリーブのサイズとダイスの対応、「何本・何mm²でどのスリーブを選ぶか」の組み合わせを一覧にまとめる。工具の基本的な確認方法は技能試験で使う工具一覧:持ち込み可能・禁止の確認と選び方に整理しているので、工具選定の全体像はそちらも参照してほしい。
圧着工具とリングスリーブの基本を押さえる
技能試験で使うリングスリーブ用圧着工具は「JIS C 9711」に適合したものが指定されている。ホームセンターで売っている安価な工具でも試験に使えるが、ダイスの刻印(○・小・中・大)が鮮明に出るかどうかは工具の品質に依存する。練習段階から本番で使う工具と同じものを使っておくのが鉄則だ。
リングスリーブの種類
試験で登場するリングスリーブは以下の3サイズ。
- 小スリーブ:最も出番が多い。1.6mm線の接続がメインになる
- 中スリーブ:2.0mm線が絡む接続や、1.6mm線が多本数になる場合
- 大スリーブ:試験ではほとんど出ないが、2.0mm線の多本数接続で使う
圧着ダイスの刻印
圧着工具のダイス(くわえる穴)には4種類の刻印がある。
- ○(丸):最小断面積。小スリーブに1.6mm線2本のとき専用
- 小:小スリーブに使う(一部の組み合わせ)
- 中:中スリーブに使う
- 大:大スリーブに使う
この刻印が圧着後のスリーブに転写されて残る。採点者はこの刻印を目視で確認するため、薄い・不鮮明・位置ズレのいずれも欠陥扱いになりうる。
スリーブとダイスの対応表
まず「スリーブのサイズ」と「使うダイス」の基本対応を確認する。
| リングスリーブ | 使うダイス刻印 | 備考 |
|---|---|---|
| 小スリーブ | ○ または 小 | 接続する電線の合計断面積で切り替わる(下表参照) |
| 中スリーブ | 中 | 中スリーブを使う場合は必ず「中」 |
| 大スリーブ | 大 | 大スリーブを使う場合は必ず「大」 |
小スリーブだけ「○」と「小」の2択があるのがミスポイントだ。後述する組み合わせ表で正確に覚えておく必要がある。
電線の本数・断面積とスリーブの組み合わせ表
技能試験で実際に使う組み合わせを一覧にまとめる。VVFケーブルの心線(1.6mm・2.0mm)の接続を前提としている。
1.6mm線のみの接続
| 1.6mm線の本数 | スリーブサイズ | ダイス刻印 |
|---|---|---|
| 2本 | 小 | ○(丸) |
| 3本 | 小 | 小 |
| 4本 | 小 | 小 |
2.0mm線が混在する接続
| 接続する電線の組み合わせ | スリーブサイズ | ダイス刻印 |
|---|---|---|
| 2.0mm×1本 + 1.6mm×1本 | 小 | 小 |
| 2.0mm×1本 + 1.6mm×2本 | 中 | 中 |
| 2.0mm×2本 | 中 | 中 |
| 2.0mm×2本 + 1.6mm×1本 | 中 | 中 |
| 2.0mm×3本 | 大 | 大 |
この表を丸暗記するのではなく「接続する電線の合計断面積」で考えると応用が効く。1.6mmの断面積は約2mm²、2.0mmは約3.14mm²が目安だ。合計が2mm²以下なら○、8mm²以内なら小スリーブ・小ダイスまで、それ以上なら中・大と段階が上がる感覚を持っておくと混乱しにくい。
現場と試験の大きな違い:「感覚」は試験では通用しない
現場で接続作業をしてきた人ならわかると思うが、実際の現場では「だいたいこのサイズで入るから」という経験則で圧着することが多い。特に急いでいるときはスリーブのサイズを手触りで選んでそのまま圧着する、ということも起きる。
試験では「それ」が通用しない。
- スリーブのサイズが一段違うだけで欠陥(重大欠陥)になる
- ダイスの選択ミス(小スリーブに「小」ではなく「○」を使うべきところで逆にする)も欠陥扱い
- 圧着が浅くて刻印が見えない・二度押しで変形も欠陥
現場経験者が試験で落ちるとしたら、むしろこのパターンが多い。「わかっているつもり」で確認をサボった結果、1.6mm×2本に「小」を押してしまう(正しくは「○」)。
練習の段階から「本数と太さを声に出して確認してからスリーブを選ぶ」という手順を習慣にしておくと、本番での選択ミスを防げる。
圧着工具の持ち方と押し切りの確認
工具の選択ができていても、圧着の押し切りが不十分だと刻印が薄くなり欠陥につながる。試験で使う圧着工具はラチェット機構付きが標準的で、「完全に握りきるまでハンドルが戻らない」構造になっている。これが正常に機能しているかを事前に確認しておく。
- ハンドルを途中で止めようとしてもロックがかかり戻らないこと
- 完全に握りきったときにカチッという感触・音があること
- 練習用スリーブで試し押しして刻印が鮮明に出ることを確認する
古い工具や安価な工具ではラチェットが磨耗していて途中で止まる場合がある。本番直前ではなく、練習開始前に確認しておくのがいい。
まとめ
圧着工具とリングスリーブの選択は、技能試験の採点で最も失点が出やすいポイントだ。表通りに選ばないと欠陥になるが、覚えること自体は多くない。
- 1.6mm×2本 → 小スリーブ・○ダイス(これだけ特別扱い)
- それ以外の「小スリーブ使用」の組み合わせ → 小ダイス
- 中スリーブ → 中ダイス、大スリーブ → 大ダイス(一対一対応)
- 現場の感覚に頼らず、本数と太さを確認してからスリーブを選ぶ習慣をつける
組み合わせ表を頭に入れたうえで、練習で繰り返し手を動かすことで自然に選択ミスが減っていく。試験当日は焦りでミスしやすいため、手順の確認を練習のうちから習慣にしておくことが大切だ。
