電線の被覆を剥くコツ:ストリッパーの選び方と現場の判断基準

「被覆剥きなんて誰でもできる」と思われている工程です。ストリッパーを握って、線に当てて、引くだけ。それは確かにそうです。

でも、現場で実際にトラブルを見ていると、このシンプルな作業が意外と起点になっています。
端子台に接続したあとに「なんか接触が悪い」と感じて引っ張ったら芯線が切れた。インバータの誤動作を追ったら、制御線の芯線に細い傷が入っていて、そこで断線しかけていた。「まあいいか」で使い続けた線が、半年後に現場を止めた。

この記事では、ストリッパーの選び方・剥き手順・やってはいけないNGパターンを、現場の感覚で整理します。知識として読むより、次に線を剥くときに「ちょっと思い出す」ものとして使ってもらえれば十分です。


ストリッパーの種類と選び方

「ストリッパー」と一口に言っても、種類によって得意な線が全然違います。手持ちの工具が合っていないと、いくら丁寧に使っても芯線を傷つけるリスクが上がります。

手動ワイヤーストリッパー

最も一般的な形で、ハンドルを握ると刃が入って被覆が剥ける構造です。
IV線(0.75〜2.0sq程度)やVVFの細線には向いていますが、線径に合ったノッチ(刃の穴)を選ぶことが大前提です。太いノッチに細線を入れると刃が深く入りすぎて芯線に傷が入ります。細いノッチに太線を入れると被覆を剥ききれません。

安価なものは線径の対応幅が狭いので、使う線種が決まっているなら線径に合ったものを選ぶのが現実的です。

自動ワイヤーストリッパー

握るだけで剥き長さを一定に保ちながら被覆を除去できるタイプです。端子台に同じ長さで剥いた線を何十本も仕上げる作業には、手動よりはるかに効率がいいです。
ただし、細すぎる線(0.2sq以下)やシールド線には対応していないものが多く、また価格も上がります。工場のパネル製作のように大量に処理する現場向けです。

電工ナイフとの使い分け

VVFの外装(シース)や太い電線の被覆剥きには、電工ナイフが現実的な場面があります。
理由はシンプルで、ストリッパーは対応できる線径に上限があるからです。VVFの外装剥きをストリッパーで無理にやろうとすると、力が要るうえに内部の芯線を傷つけるリスクが高い。

現場での使い分けの目安はこうです。

  • 細線(IV線・制御線・1.25sq以下):ワイヤーストリッパーを使う
  • VVFのシース(外装)剥き:電工ナイフで縦方向に切り込みを入れてから剥がす
  • VVFの内部芯線(1.6mm・2.0mm)の被覆剥き:ナイフストリッパーまたは専用のVVFストリッパー
  • シールド線・0.2sq以下の極細線:後述の専用工具か手作業

「1本の工具で全部対応しよう」と考えると、どこかで無理が出ます。線種ごとに使う工具を分けるのが、傷を防ぐ一番の近道です。


被覆剥きの正しい手順

「どのくらい剥けばいいか」と「どのくらいの力で刃を入れるか」の2点が、被覆剥きの品質を決めます。

剥き長さの目安

接続先によって適切な剥き長さは変わります。長すぎても短すぎても不具合の原因になります。

  • ねじ式端子台:7〜10mm。端子の金属部分にしっかり芯線が当たる長さ。座金の外に芯線が見えるようなら剥きすぎです。
  • バネ式・プッシュイン端子台:8〜10mm。端子の挿入口に合わせた長さ。端子台によってはゲージ(目安の溝)が付いているので活用する。
  • フェルール端子(棒端子)を使う場合:フェルールの長さに合わせる(一般的に8〜12mm)。フェルールの先から芯線がはみ出すのはNG。
  • 差込コネクタ(ワゴ等):11〜13mm程度。コネクタのゲージ穴に合わせるのが確実。

端子台の接続方法の詳細は端子台の種類と選び方:ねじ式・バネ式・フェルール端子の使い分けも参考になります。

力加減:芯線を傷つけない感覚

ストリッパーを使うときに「ぎゅっと握る」のは正解ではありません。
刃が被覆に入ればいいだけで、芯線に到達してはいけない。感覚的には「被覆に刃が食い込む瞬間の抵抗を感じたら、それ以上は押し込まない」程度の力です。

細線ほど少ない力で十分です。0.5sqや0.75sqの線を太線と同じ感覚で握ると、一発で芯線に傷が入ります。最初は少し弱めで試して、被覆が剥けるギリギリの力加減を探るのが正解です。

電工ナイフの場合は、刃を被覆に対して「鉛筆削りのように斜めに当てる」と芯線への食い込みを防ぎやすいです。まっすぐ直角に当てると、力が抜けた瞬間に深く入りすぎます。

よじれた芯線の整え方

撚線(より線)は被覆を剥いたあと、芯線がバラけやすいです。そのまま端子台に入れようとすると、1本だけ外に飛び出して絶縁不良になる可能性があります。

剥いたあとに軽く指先で撚り直してから端子に挿入するのが基本です。フェルール端子を使う場合は圧着前に撚り直すことで、フェルール内にきれいに収まります。フェルール圧着の詳細は電線の被覆剥きとリングスリーブの組み合わせ:一覧まとめも合わせて参照してください。


現場でやってはいけないNGパターン

「わかってはいるけど、やってしまう」NGを4つ挙げます。どれも「その場は動く」ので見過ごされやすいですが、後々のトラブルに直結します。

NG1: 芯線に傷を入れたまま使う(断線の時限爆弾)

傷が入った芯線は、断面積が減っています。細線ほど影響が大きく、ちょっとした引っ張りや振動で、その部分から断線します。
「傷が入ったな」と気づいたら、その部分から先を切って剥き直すのが鉄則です。「まあ動くからいいか」で使い続けた結果、3ヶ月後に現場で原因不明のエラーが出て追いかけるはめになります。

NG2: 剥き長すぎて絶縁部分が端子台に入らない

芯線部分が長く露出した状態で端子台に入れると、隣の端子との間に絶縁距離が確保できません。
特にねじ式端子台で締め付けたとき、芯線が座金の外に飛び出して隣の端子に接触するリスクがあります。短絡(ショート)の原因になります。
「端子台の金属部分に収まる長さ」を意識して剥くのが基本です。

NG3: 剥き短すぎて芯線が端子に接触しない

逆に剥き長さが足りないと、端子台の金属部分に芯線が届いていない状態になります。一見接続できているように見えて、実際には芯線が被覆の端をかみこんでいるだけ、という状態です。
接触抵抗が高くなり、電圧降下・発熱・最悪の場合は発火につながります。「ちゃんと入った」と感じても、端子台のゲージに合わせて剥き長さを確認する習慣が重要です。

NG4: 一度傷が入った芯線をそのまま使う(「まあいいか」が事故につながる)

NG1と似ていますが、こちらは「傷に気づいていない」ケースです。
刃がちょっと深く入ったかも、と思いながらも確認しないまま使う。細線は特に傷が見えにくいので、剥いたあとに芯線全体を目視で確認する習慣が必要です。
光に当ててみると傷が見えやすくなります。少しでも引っかかりや段差を感じたら、迷わず剥き直してください。


シールド線・極細線の扱い

シールド線(シールドケーブル)と0.2sq以下の極細線は、通常のストリッパーではまず対応できません。専用の扱いが必要です。

シールド線の被覆剥き

シールド線は外装(シース)の下にシールド層(編組や箔)があり、その内側に絶縁体と芯線が入っています。構造が多層なため、1工程では剥けません。

手順はおおむねこうです。

  1. 外装(シース)を電工ナイフで縦方向に切り込みを入れて剥がす
  2. シールド層(編組)をほぐして折り返し、ドレン線として使うか、適切な長さで切断する
  3. 内部の芯線被覆を細線用ストリッパーで剥く

シールド層を傷つけると、シールドの効果が落ちます。カッターや電工ナイフを使う際は、刃の深さに気をつけながら丁寧に作業してください。

極細線(0.2sq以下)の被覆剥き

0.2sq以下の極細線は、通常のストリッパーでは刃が入りすぎて芯線を切断してしまいます。
使える工具の選択肢はこうです。

  • 精密ワイヤーストリッパー:細線専用の製品(ホーザン P-96等)を使う。ノッチのサイズを必ず線径に合わせる。
  • 熱ストリッパー:熱で被覆を溶かして剥くタイプ。芯線に傷を入れないが、フッ素系被覆などは別途確認が必要。
  • スクレーパー方式の手作業:細いカッターの背を当てて、軽く引くように被覆を削り取る。コツがいるが、工具がない現場での応急対応として使える。

量産や繰り返し作業が多い場合は、精密ストリッパーを1本持っておくだけでストレスが大きく減ります。


まとめ

被覆剥きで守るべきことを突き詰めると、この2点に集約されます。

  • 剥き長さを接続先に合わせる(端子台・コネクタのゲージを確認する習慣)
  • 芯線の傷を目視で確認してから使う(少しでも怪しければ剥き直す)

この2点を守るだけで、被覆剥き起因のトラブルは大半防げます。ストリッパーの選び方・力加減・NGパターンは、この2点を確実に実行するための手段です。

「丁寧な被覆剥き」は、地味でも確実に現場の品質を上げます。自分が作った配線を、半年後の自分が保全するかもしれない。そのときに「あのとき剥き直しておけばよかった」と思わなくて済む仕事をしておくのが、現場の基本だと思っています。

筆者が実際に使っているワイヤーストリッパー

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現場で普段から使っているベッセル製を紹介します。単線用(3500E-1)と撚線用(3500E-2)でシリーズが分かれているので、使う電線に合わせて選んでください。