アナログ信号の種類まとめ|4-20mA・0-10V・熱電対・測温抵抗体の使い分け

ON/OFFとアナログの違い:「量」を伝える信号

PLCにつながる信号の大半は、押しボタンやセンサのON/OFF——つまり「あるか、ないか」の2択で伝わるデジタル信号です。これに対してアナログ信号は、「どのくらいか」という量そのものを伝えます。タンクの水位が何%か、炉の温度が何度か、圧力がどのくらいか。ON/OFFでは表現できない連続的な値を扱いたいとき、アナログ信号の出番です。

ややこしいのは、ひとくちにアナログといっても伝え方が複数あることです。電流で伝えるもの、電圧で伝えるもの、そもそも電気信号ですらなく「金属の性質」を利用して温度を測るもの。現場の計装まわりを触り始めた若手が最初につまずくのがここです。「4-20mAって何?」「熱電対と測温抵抗体って何が違うの?」——この記事では、工場でよく出会うアナログ信号を種類ごとに整理し、なぜその方式が使われているのかという理屈まで含めて解説します。理屈が分かれば、配線トラブルの原因推理や機器選定のときに「なぜそうするのか」が自分で判断できるようになります。

電流信号 4-20mA:工業計測の事実上の標準

工場の計装信号で最も多く出会うのが、4-20mAの電流信号です。測定値の0%を4mA、100%を20mAに対応させて、その間を電流の大きさで伝えます。圧力伝送器、流量計、レベル計——プロセス系の計器の多くがこの方式で、工業計測の事実上の標準といっていい存在です。

なぜ0mAではなく4mAから始まるのか

初めて見た人が必ず疑問に思うのが「なぜ0からじゃないのか」です。答えは単純で、0mAを使ってしまうと「測定値がゼロ」と「断線」の区別がつかないからです。0-20mAの信号で受信側が0mAを読んだとき、それは本当に測定値がゼロなのか、それとも途中でケーブルが切れているのか、判別のしようがありません。

4-20mAなら、正常時は最低でも4mA流れています。だから受信側で4mAを大きく下回る値を読んだら「これは断線か機器故障だ」と即座に分かる。この「生きている状態のゼロ」をライブゼロと呼びます。信号そのものに自己診断の仕組みが組み込まれているわけです。プラントのように断線を放置できない現場でこの方式が標準になったのは、この一点だけでも納得がいきます。

電流で送ると距離とノイズに強い

もうひとつの利点が伝送品質です。電流はループの中でどこを測っても同じ値になる、という性質があります。つまり配線が長くなって配線抵抗による電圧降下が起きても、流れている電流の値そのものは変わらない。電圧で送る方式だと配線の電圧降下がそのまま誤差になりますが、電流ならその影響を受けにくいのです。ノイズが乗って信号の値がふらつく、という面でも電流信号は電圧信号より有利とされます。現場の計器からPLCのある制御盤まで何十メートルも引き回す、という状況が当たり前の工場計装で標準になったのは、この「長距離に強い」性質があってこそです。

電圧信号 0-10V / 1-5V:シンプルだが長距離に弱い

電圧の大きさで量を伝えるのが電圧信号で、代表的なレンジは0-10Vと1-5Vです。インバータの周波数指令やバルブの開度指令など、盤内や近距離の機器間のやり取りでよく使われます。受信側は電圧を読むだけなので配線の考え方がシンプルで、扱いやすいのが利点です。

弱点は前の章の裏返しで、長距離とノイズに弱いことです。配線が長くなれば配線抵抗による電圧降下が誤差として乗りますし、外来ノイズで信号がふらつく影響も受けやすい。だから電圧信号を使うのは基本的に短距離、長く引くなら電流信号、というのが使い分けの大枠です。0-10Vにはライブゼロが無いので断線検知ができない点も、4-20mAとの対比で押さえておきたいところです(1-5Vは1Vが下限なのでライブゼロの考え方が活きます)。

ここで知っておくと得するのが、電流と電圧の橋渡しです。4-20mAの電流信号を250Ωの抵抗で受けると、オームの法則どおり1-5Vの電圧に変換できます(4mA×250Ω=1V、20mA×250Ω=5V)。現場では長距離を4-20mAで引いてきて、受け側で抵抗を介して1-5Vとして読む、という手法がよく使われます。電流入力に対応していない機器で4-20mAを受けたいときの定番テクニックなので、頭の引き出しに入れておいてください。

温度センサー系:熱電対と測温抵抗体

温度の測定では、伝送器を介さずセンサ素子をそのままアナログ入力ユニットにつなぐケースがよくあります。代表が熱電対と測温抵抗体です。どちらも「温度を電気的な量に変える」センサですが、原理がまったく違います。

熱電対:2種類の金属が生む起電力で測る

熱電対は、2種類の異なる金属を接合すると、接点の温度に応じた起電力(微小な電圧)が生じるという現象を利用したセンサです。構造は金属線2本の先端を接合しただけ、と極めてシンプル。丈夫で応答も速く、高温域まで測れるため、炉やヒータまわりの温度測定で広く使われています。種類は金属の組み合わせで何種類もありますが、現場で最もよく見るのはK型(K熱電対)です。

熱電対で絶対に押さえておきたい注意点が延長配線です。熱電対の信号線を延長するとき、そのへんの銅線でつないではいけません。途中に別の金属の接点ができると、そこに余計な起電力が生じて測定値が狂うからです。延長には熱電対と同等の熱起電力特性を持つ「補償導線」を使う必要があります。「熱電対の温度がなぜかズレる」というトラブルで、延長部が普通の電線だった——というのは現場の定番ネタです。

測温抵抗体:温度で変わる抵抗値で測る

測温抵抗体は、金属の抵抗値が温度によって変化する性質を利用したセンサです。代表格は白金を使ったPt100で、温度に対する抵抗変化が安定しているため、精度を重視する温度測定でよく選ばれます。熱電対が「起電力を読む」のに対し、こちらは「抵抗値を読む」——原理が根本から違うことをまず押さえてください。

抵抗を読む方式ならではの課題が、配線自体の抵抗が測定値に混ざってしまうことです。センサまでの電線にも抵抗があるので、そのぶん温度が高めに読めてしまう。これを打ち消すために、配線を3本にして配線抵抗の影響をキャンセルする「3線式」が一般的に使われています。測温抵抗体の端子が3つあるのを見て「なんで3本?」と思ったら、それは配線抵抗対策です。

使い分けの目安表

ここまでの内容を一覧に整理します。それぞれの弱点とセットで覚えると、選定の理由が言えるようになります。

信号の種類特徴向いている用途
4-20mA(電流)ライブゼロで断線検知可。長距離・ノイズに強い圧力・流量・レベルなど計装全般。長距離伝送
0-10V / 1-5V(電圧)配線がシンプル。長距離・ノイズに弱いインバータの速度指令など盤内・近距離の指令
熱電対(K型など)丈夫で高温域に対応。延長は補償導線が必須炉・ヒータなど高温の測定
測温抵抗体(Pt100)安定した測定に向く。3線式で配線抵抗を打ち消す精度を重視する温度測定

なお、アナログ信号は方式を問わずノイズの影響と無縁ではいられません。特に微小な信号を扱う温度センサ系や電圧信号では、シールド付きケーブルとは?ノイズ対策の仕組みと接地(片側/両側)の考え方【FA配線の基本】で解説しているシールド線の使い方が効いてきます。インバータやサーボが近くにある盤では、制御盤のノイズフィルタ:インバータ・サーボ周りで誤動作を防ぐ取り付け方もあわせて読んでおくと、アナログ値がふらつくトラブルの予防になります。「値がおかしい」となったときの切り分けの考え方はセンサーが誤動作する時の原因と切り分け|チャタリング・外乱光・ノイズが参考になります。

PLCで受けるには:アナログ入力ユニットとスケーリング

これらのアナログ信号をPLCで扱うには、アナログ入力ユニットが必要です。ユニットは受け取った電流・電圧・センサ信号をA/D変換して数値(デジタル値)にしますが、この段階で得られるのはあくまで「変換後の生の数値」であって、圧力や温度そのものではありません。どの範囲の入力がどの数値になるか、分解能や変換の細かい仕様はユニットの機種・設定によるので、必ず使うユニットのマニュアルで確認してください。

そして生の数値を「0.0〜1.0MPa」「0〜200℃」のような工学値に換算する処理——スケーリングを、ラダー側で用意することになります。4-20mAの信号を実際にGX Works3で工学値に変換する具体的な回路例は、【GX Works3】アナログ入力のスケーリング回路|4-20mAを工学値に変換する実例で解説しています。信号の種類を理解したら、次はこのスケーリングまでセットで身につけると、アナログまわりの仕事が一通り自分で組めるようになります。

まとめ

工場で出会うアナログ信号の種類と使い分けを整理しました。要点です。

  • アナログ信号は「量」を伝える:ON/OFFでは表現できない水位・温度・圧力などの連続値を扱う
  • 4-20mAは工業計測の事実上の標準:4mA始まり(ライブゼロ)で断線と判別でき、長距離・ノイズに強い
  • 電圧信号(0-10V/1-5V)は近距離向き:シンプルだが電圧降下とノイズに弱い。4-20mAを250Ωで受けて1-5Vに変換する手法は定番
  • 熱電対は起電力、測温抵抗体は抵抗値:K型の延長には補償導線、Pt100は3線式で配線抵抗を打ち消す
  • PLCで受けるにはアナログ入力ユニット+スケーリング:生の数値を工学値に換算して初めて使える。細かい仕様は機種・設定による

アナログ信号は方式ごとに「なぜその形なのか」という理由がはっきりしています。ライブゼロ、電流伝送、補償導線、3線式——どれも先人がトラブルと引き換えに標準化してきた知恵です。理屈ごと覚えておけば、初めて見る計器でも当たりを付けて向き合えるようになります。

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