シールド付きケーブルとは?ノイズ対策の仕組みと接地(片側/両側)の考え方【FA配線の基本】

「アナログ値が暴れる」「通信エラーが消えない」の裏にノイズがいる

温度や圧力のアナログ値が実際は安定しているはずなのに表示だけフラフラ動く。シリアル通信やエンコーダのパルスがときどき化けてエラーが出る。こういう症状で配線を疑うと、原因が信号線に乗ったノイズだったというのはFAの現場でよくある話です。

その対策の基本になるのがシールド付きケーブルです。ただしシールドは「使えば効く」ものではなく、接地の仕方を間違えると逆にノイズ源になることもあります。この記事ではシールドの仕組みと、いちばん間違いが多い接地(片側/両側)の考え方を現場目線で整理します。

制御盤全体のノイズ対策の兄弟記事として制御盤のノイズフィルタ:インバータ・サーボ周りで誤動作を防ぐ取り付け方もあわせて読むと、発生源側と信号線側の両面から対策が見えます。

そもそもシールドとは何か

シールド付きケーブルは、信号を通す芯線の周りを導体(金属)で覆ったケーブルです。この覆っている導体がシールドで、外から飛んでくる電気的なノイズを芯線の代わりに受け止め、アースへ逃がす役割をします。

編組シールドとアルミ箔シールド

シールドの構造にはいくつか種類があります。

  • 編組(あみぐみ)シールド:細い銅線を網状に編んで芯線を覆ったもの。柔軟性があり、機械的にも強い。可動部やロボット周りで使われることが多い
  • アルミ箔(テープ)シールド:アルミを蒸着したテープを巻いたもの。芯線を隙間なく覆えるが、それ自体は導通を取りにくいため、一緒に走らせたドレン線(裸の導体)で接地する
  • 二重シールド:アルミ箔シールドと編組シールドを重ねたもの。箔で隙間を無くしつつ編組で低インピーダンスの接地経路を確保でき、ノイズの厳しい環境で使われる

静電シールドと磁気シールドは別物

ここは混同しやすいところです。一般的なシールドケーブルのシールドは静電シールドで、電界(容量結合)で飛んでくるノイズに対して効きます。近くの動力線と信号線の間はコンデンサのように容量結合しており、そこを通って乗るノイズをシールドで受け止める、という考え方です。

一方、電流が作る磁界(磁気結合)で飛んでくるノイズは磁気シールドの話で、銅の編組シールドでは効きにくいものです。磁界ノイズにはツイスト(対をよじる)や動力線から距離を取る配線のほうが効きます。「シールドを付けたのに磁界性のノイズが減らない」というのは、そもそも狙う相手が違うためです。

なぜシールドがノイズを減らすのか

動力線とパラレルに走る信号線には、両者の間の容量結合を通してノイズ電流が乗ろうとします。シールドがあると、この容量結合が「芯線とシールドの間」ではなく「動力線とシールドの間」で起きるようになり、乗ったノイズはシールドを伝ってアースへ流れていきます。芯線を静電的に覆って、ノイズを芯線の代わりに受けて逃がす、というのが基本原理です。

ここで大事なのは、逃がす先、つまりアースにきちんとつながっていて初めて機能するという点です。シールドを接地しないまま宙に浮かせておくと、拾ったノイズを逃がせず、むしろシールド自体がアンテナになって芯線へノイズを渡してしまうことがあります。「シールド線を使っているのに効かない」ときは、接地されていない・接地が途中で切れているケースを疑います。

接地の考え方(ここがいちばん間違えやすい)

シールドは接地の仕方で効果が大きく変わります。片側接地と両側接地の使い分けを正しく理解しておくことが、ノイズ対策の成否を分けます。

片側(片端)接地:低周波・信号系の基本

アナログ計装やシリアル通信など、比較的低周波の信号系ではシールドの片側だけを接地するのが基本です。理由はグランドループを避けるためです。

ケーブルの両端でシールドを接地すると、両端の接地電位はぴったり同じにはならず、わずかな電位差が生じます。この電位差でシールドに循環電流(グランドループ電流)が流れ、それ自体が新たなノイズ源になってしまいます。片側だけを接地すればシールドに電流が流れる閉ループができないため、この循環電流を避けられます。

両側(両端)接地:高周波対策で有利な場合がある

一方、高周波ノイズに対しては両端接地のほうが有利になる場合があります。高周波ではシールドを両端で接地したほうが接地インピーダンスが下がり、ノイズを効率よく逃がせるためです。

ただし両端接地には、前述の接地電位差による循環電流が流れるリスクがつきまといます。つまり「グランドループを避けたい低周波信号系は片側接地」「高周波EMC対策では両端接地」という、トレードオフの使い分けになります。一般に、アナログ計装やシリアル・現場ネットワーク通信は片側接地、高周波のEMC対策を狙う場面では両端接地、と覚えておくと整理しやすいです。どちらにするかは機器メーカーの配線指示に従うのが確実です。

接地する側と、接地は1点にまとめる

片側接地にする場合、接地する側は原則として受信側(信号を受け取る機器側)の1点に統一します。盤の中で信号を受けるPLCやコントローラ側でまとめて接地する、という運用です。

もう一つ大切なのが、シールドを途中で切らずに連続させ、接地点は1箇所にすることです。中継端子でシールドを一度切って浮かせてしまうと、そこから先はシールドが機能しません。中継を挟む場合もシールドは渡り配線でつなぎ、最終的に接地点は1点に集約します。複数箇所で接地すると、意図せず両端接地と同じグランドループができてしまうので注意します。

FAでの使いどころ

シールドケーブルを使うべき代表的な信号は次のようなものです。いずれも微小信号か、タイミングがシビアで、ノイズの影響を受けやすい線です。

  • アナログ入力:4-20mAの電流信号や0-10Vの電圧信号。値がノイズで揺れると制御が乱れる
  • エンコーダ・パルス列:パルスが化けると位置や速度を取りこぼす
  • シリアル/現場ネットワーク通信:ノイズで通信エラーやリトライが増える
  • サーボ・インバータ周りの信号線:発生源のすぐ近くを通る信号ほどシールドの効果が出やすい

あわせて、配線そのものの分離も効果的です。動力線と信号線はできるだけ離して配線し、やむを得ず交差する場合は直角に交差させて、平行して長く並走させないようにします。使う電線・ケーブルの種類そのものについては電線・ケーブルの種類と許容温度まとめ|IV/VVF/CVも参考にしてください。

施工の注意点

シールドは正しく施工して初めて効きます。現場で押さえておきたいポイントです。

  • ドレン線・端末処理:アルミ箔シールドはドレン線で接地する。シールドを剥いた部分は必要な長さだけ処理し、接地端子までを短くまとめる。芯線とシールドの露出部分が長いと、そこがノイズの入口になる
  • 浮かせる側の絶縁:片側接地で接地しない側のシールドは、他の端子や金属に触れて意図せず接地されないよう絶縁処理する
  • 同ダクトに入れない:シールド線でも、動力線と同じダクト・同じ束に入れると効果が落ちる。信号線は動力線と別ルートで配線する

盤内での配線の分離やまとめ方については制御盤の配線を整理する方法も参考になります。ノイズ対策は発生源側のフィルタと信号線側のシールドの両輪なので、制御盤のノイズフィルタの記事とセットで押さえておくと現場で迷いにくくなります。

まとめ

シールド付きケーブルと接地の要点です。

  • シールドの正体:芯線を導体で覆い、容量結合で乗る静電ノイズを受けてアースへ逃がす。磁界ノイズは別物でツイストや距離が効く
  • 接地しないと無意味:宙に浮かせるとノイズを逃がせずアンテナ化する。逃がす先のアースが必須
  • 片側接地:低周波・アナログ計装・通信の基本。両端接地するとグランドループ電流が流れて逆効果になるため、片側で循環電流を避ける
  • 両側接地:高周波EMC対策では有利な場合がある。ただし接地電位差によるループ電流とのトレードオフ
  • 接地は1点・受信側:原則は受信側(機器側)1点。中継でシールドを切らず連続させ、接地点は1箇所に集約する
  • 配線の基本:動力線と信号線は離す。交差は直角。同ダクトに入れない