三相モーターの正転・逆転回路の作り方|MC2台のインターロック配線【可逆運転】
正転・逆転回路(可逆運転)はFAで最頻出の回路のひとつ
コンベアの前進・後退、リフトの上昇・下降、スクリューの正転・逆転。三相モーターを両方向に回す「可逆運転」は、FAの現場で最も出会う頻度が高い回路のひとつです。
使う部品は電磁接触器(MC)2台とサーマルリレー、押しボタンだけ。構造はシンプルですが、「2台のMCが絶対に同時に入らないようにする」というインターロックの設計を誤ると、主回路の相間短絡という重大なトラブルに直結します。
この記事では、逆転の原理から主回路・制御回路の組み方、インターロックの二重化、運用上の注意までを順番に解説します。読み終わったら、正転・逆転回路を1から自分で組めるようになるのがゴールです。MCそのものの仕組みや選び方は電磁接触器(MC)とは?仕組みと選び方の基準を先に確認しておくと理解が速いです。
原理:3相のうち2相を入れ替えると回転方向が反転する
三相モーターの回転方向は、固定子に流れる三相交流が作る「回転磁界」の向きで決まります。回転磁界の向きは相順(R→S→Tの順番)で決まるため、3相のうち任意の2相を入れ替えると相順が逆になり、モーターは逆方向に回転します。
ポイントは「任意の2相でよい」ことです。R-Sを入れ替えても、S-Tを入れ替えても、R-Tを入れ替えても、結果はどれも逆転になります。3相すべてを入れ替えると相順が元に戻ってしまうため、入れ替えるのは必ず2相だけです。
つまり正転・逆転回路とは、「そのままつなぐ経路」と「2相を入れ替えてつなぐ経路」の2ルートを用意して、MCで切り替える回路ということになります。
主回路の構成:MC2台で相の入れ替えを切り替える
主回路の構成は次のとおりです。電源側から順に追っていきます。
- 配線用遮断器(MCCB):短絡保護。電源の入口
- 正転用MC(MC-F)と逆転用MC(MC-R):2台を並列に配置し、どちらか一方だけが入る
- サーマルリレー(THR):過負荷保護。MCの負荷側に1台でよい(正転・逆転どちらの経路でも電流は同じサーマルを通る)
- モーター
肝心なのはMC-R側の結線です。MC-Fは電源の3相をそのままの相順でモーターへつなぎ、MC-Rは負荷側で2相を入れ替えて(たすき掛けにして)つなぎます。これで、MC-Fが入れば正転、MC-Rが入れば逆転になります。
この構造から分かるとおり、もしMC-FとMC-Rが同時に入ると、入れ替えた2相同士が電源側で直接ぶつかり、相間短絡になります。だからこそ後述のインターロックが必須です。
なお、ブレーカやMCの容量、サーマルの整定値はモーターの定格で決まります。具体的な数値は機種によるため、必ずモーターの銘板とメーカーの選定資料を確認してください。
制御回路の構成:自己保持+相互インターロック
制御回路は、自己保持回路を2セット並べて、お互いのb接点でロックし合う構成です。文章で追うと次のようになります。
正転側の回路
- 停止ボタン(b接点)→ 正転ボタン(a接点)→ MC-Rの補助b接点 → MC-Fコイル
- MC-Fの補助a接点を正転ボタンと並列につないで自己保持
逆転側の回路
- 停止ボタン(b接点)→ 逆転ボタン(a接点)→ MC-Fの補助b接点 → MC-Rコイル
- MC-Rの補助a接点を逆転ボタンと並列につないで自己保持
停止ボタンは正転・逆転の共通部分に直列で1個入れます。押せばどちらの自己保持も切れて、モーターは停止します。
動作を追ってみます。正転ボタンを押すとMC-Fが入り、自己保持がかかって手を放しても正転が続きます。このときMC-Fの補助b接点が開いているため、逆転ボタンを押してもMC-Rのコイル回路は成立しません。逆転したいときは、まず停止ボタンでMC-Fを切ってから逆転ボタンを押す、という流れになります。
自己保持の組み方や補助接点のa/bの考え方に不安がある場合は、電磁接触器の補助接点の使い方|自己保持・寸動・インターロック回路の配線で基礎から確認してください。
インターロックは「電気+機械」の二重が基本
前の章で入れた「相手MCの補助b接点」が電気的インターロックです。ただし、正転・逆転回路ではこれだけでは不十分とされるのが一般的です。
- 電気的インターロック:相手MCの補助b接点をコイル回路に直列に入れる。制御回路レベルで同時投入を防ぐ
- 機械的インターロック:2台のMCの間に機械的インターロックユニット(可逆ユニット)を取り付け、片方の可動部が動いている間はもう片方が物理的に閉じられないようにする
なぜ二重にするのか。電気的インターロックは、補助b接点の結線ミス・接点の故障・チャタリングのタイミングなど、電気側の異常が起きるとすり抜ける可能性があるからです。機械的インターロックは配線に依存しないため、電気側が壊れても最後の砦として機能します。メーカー各社から正転逆転用にMC2台と機械的インターロックユニットをセットにした可逆形の製品が用意されているのは、この二重化が前提になっているためです。
また、PLCで正転・逆転を制御する場合でも、ハードウェア側のインターロックは残すのが基本です。PLCのプログラムミスや出力ユニットの故障があっても、主回路の短絡だけはハード側で防ぐという考え方です。「ソフトでインターロックしているからハードは不要」は制御盤設計のNGパターンです。インターロックという考え方そのものの整理はインターロック回路とは?b接点を使った安全制御にまとめています。
運用上の注意:正転中にいきなり逆転しない
回路が正しく組めていても、使い方で機械を傷めることがあります。代表的なのが「回転中の急反転」です。
正転で回っているモーターにいきなり逆相の電源を入れると、モーターは回転を打ち消しながら逆方向へ引き戻されます。このとき流れる電流は通常の始動電流よりさらに大きくなり、モーター巻線・MC・機械側の駆動系すべてに大きなストレスがかかります。意図的に急制動として使う「プラッギング」という手法もありますが、それ専用に設計された場合の話で、通常の可逆運転では一旦停止を経由してから反転する運用が基本です。
制御回路の章で紹介した「停止ボタンを押してからでないと反転できない」構成は、この運用を回路の構造で強制する意味もあります。反転の頻度が高い用途では、タイマで反転までの待ち時間を設ける設計もよく使われます。
また、頻繁な正逆切り替えはMCの開閉回数を早く消費します。開閉頻度と寿命の関係は電磁接触器・リレーの寿命と交換時期の目安|機械的寿命と電気的寿命の違いを参考にしてください。
よくある失敗と対処
- インターロック用b接点の結線漏れ:回路は普通に動いてしまうため気づきにくいのが怖いところです。正転中に逆転ボタンを押しても何も起きないことを、試運転で必ず確認します
- 正転・逆転ボタンの連打:電気的インターロックだけの回路では、接点の切り替わりのタイミング次第で瞬間的に両MCが動作しかける場合があります。機械的インターロックの併用と、一旦停止を挟む運用でカバーします
- MCの溶着:同時投入による短絡電流や度重なる急反転で主接点が溶着すると、コイルを切っても接点が閉じたままになります。つまり停止ボタンを押してもモーターが止まりません。「停止ボタンで止まらない」ときは溶着を疑い、電源側のブレーカで遮断してから点検します
- 2相入れ替えの場所の不統一:入れ替え自体はどの2相でも成立しますが、盤内で統一しておかないと後任者が混乱します。社内標準や既設盤の流儀に合わせるのが無難です
まとめ
三相モーターの正転・逆転回路のポイントを整理します。
- 原理:3相のうち任意の2相を入れ替えると回転方向が反転する
- 主回路:MC-Fはそのまま、MC-Rは2相を入れ替えて結線。同時投入は相間短絡
- 制御回路:自己保持2セット+相手MCの補助b接点で相互インターロック。停止ボタンは共通で直列
- インターロック:電気(補助b接点)+機械(インターロックユニット)の二重が基本。PLC制御でもハード側は残す
- 運用:反転は一旦停止を経由する。急反転はモーターと機械への負担が大きい
正転・逆転回路は、自己保持とインターロックという制御回路の基本要素が詰まった教材のような回路です。ここが組めるようになったら、次はモーターの始動電流を抑える定番回路であるスターデルタ始動回路にも進んでみてください。MC複数台を切り替えるという意味で、正転・逆転回路の考え方がそのまま活きます。
