スターデルタ始動の電流計算ツール【線電流・巻線電流・サーマル整定の基準】

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このページは スターデルタ始動の各部に流れる電流を一度に出せる無料ツール です。電動機の出力(kW)と電源電圧、または銘板の定格電流を入れると、全負荷電流(線電流)・デルタ運転時の巻線電流・スター始動時の線電流が並びます。サーマルリレーを主回路に入れるか巻線側に入れるかで整定の基準になる電流が変わる点も、同じ結果の中で確認できます。

⚡ スターデルタ始動 電流計算ツール

力率・効率ともに0.85を仮定して概算します。銘板の定格電流があればそちらを入力してください。

※ この計算結果はあくまで参考値です。電動機の銘板値とメーカーカタログで確認してください。電磁接触器やサーマルリレーの型式・フレームサイズはこのツールでは扱いません。

このツールで分かること

スターデルタ始動は、同じ1台の電動機でも回路の場所によって流れる電流が違うのが厄介なところです。このツールは次の4つを同時に出します(あわせて直入れ始動電流も参考値として表示します)。

  • 全負荷電流(線電流 IL):銘板の定格電流を入力すればその値。未入力なら kW×1000 ÷(√3 × V × 力率 × 効率)で概算します(力率・効率はともに0.85と仮定)
  • デルタ運転時の巻線電流(相電流 IP):IL ÷ √3(約0.577倍)
  • スター始動時の線電流:直入れ始動電流 ÷ 3。スター結線で始動している間の線電流と始動トルクは、どちらも直入れ時の1/3です
  • サーマルリレーの整定の基準電流:主回路(MC-Mの下流)なら IL、デルタ結線の巻線側なら IL ÷ √3

始動電流倍率は電動機の機種や負荷によって変わります。既定値は7にしていますが、分かっている場合は銘板やカタログの値に置き換えてください。回路そのものの仕組み(MC3台とタイマの役割、インターロック)は スターデルタ始動回路の仕組みと配線図の読み方|タイマ切替のシーケンス にまとめています。

計算例:5.5kW・200V・始動電流倍率7

銘板値が手元に無い場合の概算を追ってみます。

出すもの式結果
全負荷電流(線電流 IL)5500 ÷(√3 × 200 × 0.85 × 0.85)約22.0 A
デルタ運転時の巻線電流 IP22.0 ÷ √3約12.7 A
直入れ始動電流22.0 × 7約154 A
スター始動時の線電流154 ÷ 3約51 A

同じ5.5kWでも電源電圧が400Vなら、式の分母の V が2倍になるので線電流は半分(約11.0 A)になります。始動方式ごとの始動電流の比較は 電動機始動電流計算ツール【直入・スターデルタの始動電流を比較】 のほうが見やすいので、方式の比較が目的ならそちらを使ってください。

なぜ巻線電流が線電流の1/√3になるのか

デルタ(Δ)結線の電流の関係は IL = √3 × IP です。覚え方は 「Y結線は電圧に√3、Δ結線は電流に√3」——Y結線は電圧側に√3の差が付き、Δ結線は電流側に√3の差が付く、という対になっています。

この式を巻線電流について解くと IP = IL ÷ √3、係数にすると約0.577倍です。デルタ結線の巻線は3つの巻線が三角形につながっていて、電源から来た線電流は頂点で2つの巻線に分かれていきます。だから1つの巻線を通る電流は、電源線を流れる電流より小さくなります。

スターデルタ始動では、この三角形の頂点を電動機の外(盤側のMC)で作ります。つまりデルタ結線の巻線側に入る部品や電線には、線電流ではなく巻線電流が流れます。盤の外からモーターへ6本の線が出ていくのは、この結線を外部で切り替えるためです。

サーマルリレーの位置で基準電流が変わる

ここがスターデルタ始動でつまずきやすい箇所です。サーマルリレー(熱動継電器)は入れた位置に流れている電流を見ているだけなので、どこに入っているかで整定の基準が変わります。

サーマルの位置そこを流れる電流整定の基準
電源側の主回路(MC-Mの下流)線電流IL(全負荷電流そのもの)
デルタ結線の巻線側巻線電流(相電流)IL ÷ √3(約0.577倍)

先の計算例(5.5kW・200V)なら、主回路に入っているサーマルは約22.0 A を基準に考え、巻線側に入っているサーマルは約12.7 A を基準に考えることになります。同じ電動機・同じ保護なのに、基準になる数字が1.7倍ほど違います。

ここを意識せずに「銘板の定格電流をそのまま設定」すると、巻線側のサーマルでは設定が実際の電流より大きくなり、保護が甘い側にずれます。逆に主回路のサーマルに巻線電流の値を入れれば、運転中に動作してしまいます。図面でサーマルの位置を確かめてから、どちらの電流を基準にするかを決めるのが順番です。

基準電流が決まったあとの整定値そのもの(何倍の範囲に合わせるか)は サーマルリレー整定電流計算ツール【モーター保護電流の設定値を計算】 で計算できます。このツールで出した電流を、そちらの入力に渡す使い方になります。

電線サイズの考え方

スターデルタ始動では盤とモーターの間が6本になるぶん、1本あたりに流れる電流は小さくなります。デルタ結線の巻線側を通る電流は巻線電流、つまり IL ÷ √3 なので、線電流を基準にするより細い電流値で検討できます。電源側の主回路(MC-Mの下流)は線電流のままなので、こちらは IL で考えます。

ただし、電流値が決まっても電線サイズはまだ決まりません。許容電流は電線の種類・配線方法・同一管内に収める電線数(電流減少係数)で変わるため、サイズそのものは許容電流の表から引くのが筋道です。このツールは「どの電流で引くか」までを担当します。

サイズの決定には 許容電流計算ツール【電線サイズ選定・確認】|負荷電流から電線サイズを計算 を使ってください。巻線側なら巻線電流、主回路なら線電流を負荷電流として入力する、という受け渡しになります。

よくある間違い

  • 巻線側のサーマルに銘板の定格電流をそのまま入れる:銘板の定格電流は線電流です。巻線側に入っているサーマルが見ているのは巻線電流なので、基準は IL ÷ √3 になります。
  • 巻線側に入れたサーマルや電流計の表示を線電流だと思って読む:表示されているのは巻線電流です。線電流に直すには√3を掛けます。
  • スター始動時の電流で電源側の機器を考える:線電流が直入れ時の1/3になるのはスター結線で始動している間だけです。加速後はデルタ結線で運転するので、定常状態の電流は IL です。
  • 電線サイズを始動時の電流で選ぶ:始動は一時的な状態です。電線は運転時に流れ続ける電流で考えます。
  • 概算値を銘板値より優先する:このツールの力率・効率0.85は仮定です。銘板の定格電流が読めるなら、そちらを入力したほうが実機に近くなります。
  • 切替時間を「だいたい何秒」で決めてしまう:適切な時間は負荷の慣性や立ち上がりの重さで変わります。考え方は スターデルタ始動回路の仕組みと配線図の読み方|タイマ切替のシーケンス を参照してください。

よくある質問(FAQ)

Q1:スターデルタ始動のサーマルリレーは線電流と巻線電流のどちらで整定しますか?
A:サーマルリレーを入れた位置に流れている電流で考えます。電源側の主回路(MC-Mの下流)に入っている場合に流れるのは線電流、デルタ結線の巻線側に入っている場合は巻線電流(相電流)です。巻線電流は線電流の1/√3(約0.577倍)なので、同じ電動機でも設置位置によって基準になる電流が変わります。図面でサーマルの位置を確認してから整定値を決めてください。

Q2:なぜデルタ運転時の巻線電流は線電流の1/√3になるのですか?
A:デルタ(Δ)結線では、線電流が巻線電流の√3倍になる関係があるためです。覚え方は「Y結線は電圧に√3、Δ結線は電流に√3」で、これを巻線電流について解くと巻線電流=線電流÷√3、つまり約0.577倍になります。

Q3:スターデルタ始動なら電線を細くできますか?
A:巻線側に流れるのは巻線電流なので、線電流を基準にした場合より小さい電流で考えられます。ただし電線サイズそのものは電流値だけで決まるものではなく、配線方法や同一管内の電線数による電流減少係数を踏まえて許容電流の表から引きます。実際のサイズは許容電流計算ツールで確認してください。

Q4:銘板の定格電流が分かっている場合はどちらを使えばよいですか?
A:銘板の定格電流を入力してください。このツールの計算は力率・効率をともに0.85と仮定した概算なので、銘板値があるときはそちらのほうが実機に近くなります。銘板の定格電流は線電流として扱い、そこから巻線電流を求めます。

まとめ

スターデルタ始動の電流は、1つの値では足りません。電源側の主回路は線電流、デルタ結線の巻線側は巻線電流(線電流の約0.577倍)——この2つを区別して持っておくと、サーマルの整定も電線の検討も迷わなくなります。

  • 線電流 IL:銘板の定格電流。無ければ kW×1000 ÷(√3 × V × 力率 × 効率)で概算(力率・効率0.85と仮定)
  • 巻線電流 IP:IL ÷ √3(約0.577倍)。「Δ結線は電流に√3」から出る
  • スター始動時:線電流も始動トルクも直入れ時の1/3。ただし運転はデルタなので定常電流は IL
  • サーマル:位置で基準が変わる。主回路なら IL、巻線側なら IL ÷ √3
  • 電線:電流値まではここで出す。サイズは許容電流の表から引く

出典・参考

  • 全負荷電流(線電流)の概算式 kW×1000 ÷(√3 × V × 力率 × 効率):当サイトの電流計算ツールと同じ扱い。力率・効率0.85は仮定として明記しています
  • デルタ運転時の巻線電流 IL ÷ √3:【第二種電気工事士】三相交流の計算|線間電圧・相電圧・√3まとめに載せている「Y結線は電圧に√3、Δ結線は電流に√3」の関係
  • スター始動時の線電流・始動トルクが直入れ時の1/3:スターデルタ始動回路の仕組みと配線図の読み方|タイマ切替のシーケンスの「線電流と始動トルクはどちらも直入れ時の1/3」
  • サーマルリレーの整定の基準電流が設置位置で変わること:同記事の「電源側の主回路(MC-Mの下流)に入れる場合と、デルタ結線の巻線側に入れる場合とでは、流れる電流が線電流か巻線電流(相電流)かで異なります」
  • 電磁接触器・サーマルリレーの型式やフレームサイズ、切替時間の秒数は一次資料を確認できていないため記載していません。メーカーカタログで確認してください

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