絶縁抵抗測定(メガー)のやり方と注意点|測る前に外すもの

つないだまま測ると、電子機器を壊すことがあります
絶縁抵抗計(メガー)は、測定のために回路へ通常の使用電圧よりもはるかに高い直流電圧を意図的に加えます。PLCやインバータ、タッチパネルなどの電子機器をつないだまま測定すると、内部の半導体素子が耐えられず壊してしまう危険があります。制御盤の絶縁抵抗測定は、「どう測るか」より先に「何を外してから測るか」を押さえておくことが欠かせません。

この記事では、家庭用の単純な回路ではなく制御盤・FA設備側を対象に、測る前に切り離すべきものから、正しい手順の順番、判定基準値、印加電圧の選び方までを現場目線で整理します。

正しい手順の順番|①停電から⑧復旧まで

絶縁抵抗測定は、順番を守らないと感電や機器損傷につながります。次の順で進めてください。

  1. ① 停電させる:測定する回路の電源を確実に切ります。上流のブレーカを落とすだけでなく、他系統からの逆流(バックフィード)がないかも確認します。
  2. ② 施錠・表示をする:切ったブレーカを他の人が入れ直せないように、施錠または「作業中・投入禁止」の表示をします。絶縁抵抗測定は電線を外して盤を開けたまま時間のかかる作業なので、この一手間を省くと第三者の復電で危険な状態になります。
  3. ③ 検電して無電圧を確認する:ブレーカを切っただけで安心せず、検電器で本当に電圧がゼロになっているかを確認します。検電の基本と、停電作業全体の段取りは検電器の使い方と活線確認の基本にまとめています。
  4. ④ 残留電荷を放電する:長い電線やコンデンサ成分には、停電直後でも電荷が残っていることがあります。測定前に一度放電してから次に進みます。
  5. ⑤ 電子機器を切り離す:PLCやインバータなど、高電圧に耐えられない機器を回路から外します(詳細は次章)。ここを飛ばすと、測定そのものが機器を壊す原因になります。
  6. ⑥ 測定する:絶縁抵抗計を使い、対象の電路を測定します。測る対象(線間・対地間)は後述します。測定中は回路に高い電圧をかけている状態なので、リード線の先や被測定部に触れないこと、周囲の人に声を掛けてから測ることを忘れないでください。
  7. ⑦ 測定後にもう一度放電する:測定によって回路やコンデンサ成分に電荷がたまるため、測定が終わったら再び放電します。
  8. ⑧ 元通りに復旧して記録する:切り離した機器を元通りに結線し直し、測定値・測定日・測定箇所を記録に残します。

この順番には理由があります。無電圧の確認より先に電子機器を外すと、活線状態での作業になりかねません。放電より先に触れば感電の恐れがあります。そして電子機器を切り離すより先に測定してしまえば、機器を壊してから気づくことになります。「安全を確保する手順」が先、「測定という目的」が後という順序を崩さないことが、この作業全体の骨格です。

測る前に外すもの|制御盤で壊れやすい機器一覧

一般的なメガーの解説では省略されがちですが、制御盤では「何を切り離してから測るか」が最も事故につながりやすいポイントです。次に挙げる機器は、必ず回路から切り離してから測定してください。

  • PLC・タッチパネル・インバータなどの電子機器:CPUユニットや入出力ユニット、インバータの主回路・制御回路、タッチパネルは、いずれも高電圧の印加に耐える設計にはなっていません。電源ユニットも同様です。
  • サージアブソーバ・SPD(避雷器):これらはもともと一定以上の電圧がかかると動作する部品です。メガーの印加電圧で誤って動作したり、素子を傷めたりする恐れがあります。
  • 進相コンデンサなどのコンデンサ類:コンデンサは電荷をため込む性質があるため、正しい測定の妨げになるだけでなく、外さずに測ると測定後の残留電荷が余計に大きくなります。
  • 電子式の計測器・センサーのアンプ部:デジタル表示のメーターや、アナログ出力を持つセンサーのアンプ部分も電子回路である以上、対象から外すのが基本です。

具体的な「外し方」は機器の接続形態によって変わります。

  • 端子台で外す:電子機器への配線が端子台を経由している場合は、該当する端子のねじを緩めて電線を外します。外した電線同士が接触しないよう、テープ養生や絶縁キャップで処理しておきます。
  • 専用のブレーカ・開閉器で切る:電子機器の電源が専用のブレーカや開閉器で分かれている場合は、それを切るだけで切り離しが完了することもあります。ただし、切った先が本当にその機器だけかを図面や現物で確認してください。
  • コネクタを抜く:ユニット間の配線がコネクタ接続になっている場合は、コネクタを抜いて物理的に切り離します。抜く際は無理に引っ張らず、ロック機構を外してから抜きます。

「外したつもり」で測定して機器を壊す事故は、盤内配線が複雑なほど起こりやすくなります。外す前に単線結線図や配線図で測定する電路の先に何がつながっているかを必ず確認しましょう。

どこと どこの間を測るのか|線間と対地間は意味が違う

絶縁抵抗測定で測る対象は、大きく分けて2種類あります。

  • 電線相互間(線間):異なる電線どうしの絶縁が保たれているかを確認します。線間の絶縁が弱っていると、将来的に短絡につながる可能性があります。
  • 電路と大地間(対地間):電線と大地(接地)との絶縁が保たれているかを確認します。ここが弱っていると、漏電の直接的な原因になります。

この2つはチェックしている異常の種類が違います。線間は「電線どうしがくっつきかけていないか」、対地間は「電気が本来の経路を外れて漏れ出していないか」。どちらか一方だけでは絶縁状態を正しく把握できないため、対象の電路に応じて両方を確認するのが基本です。

なお、テスター(回路計)では絶縁抵抗を正しく測定できません。テスターの抵抗レンジは低い電圧でしか測っておらず、絶縁の劣化のように「普段の電圧では現れないが、高い電圧をかけると現れる」弱点を見つけることができないためです。テスターの使い方自体はテスターの使い方【制御盤編】で解説していますが、絶縁の確認には必ず絶縁抵抗計を使ってください。

判定基準値と印加電圧の選び方

判定基準値(電技省令第58条)

絶縁抵抗の判定基準値は、電気設備に関する技術基準を定める省令 第58条に定められています。

使用電圧の区分対地電圧の条件絶縁抵抗値
300V 以下対地電圧 150V 以下0.1 MΩ 以上
その他(対地電圧 150V 超)0.2 MΩ 以上
300V 超(低圧)0.4 MΩ 以上

ここでの対地電圧とは、接地式電路では電線と大地との間の電圧、非接地式電路では電線間の電圧を指します。制御盤で複数の電圧が混在している場合は、区分を取り違えないよう注意が必要です。

なお、稼働中でどうしても停電できない設備については、漏えい電流を測定して絶縁性能を確認する方法が電技解釈側に定められています。ただし判定基準値そのものの根拠は上記の第58条であり、代替手段の規定とは分けて理解してください。本記事では基本形である停電させての測定を扱います。

一次出典:電気設備に関する技術基準を定める省令(e-Gov法令検索)

印加電圧(250V/500V/1000Vなど)の選び方

絶縁抵抗計には、測定時にかける電圧(印加電圧)を切り替えられる機種が多くあります。代表的な設定は250V、500V、1000Vなどですが、この選び方を定めているのは法令ではなく、測定対象の機器・回路の仕様と現場の慣行です。基準値のように「法令でこの電圧を使う」と決まっているわけではない点に注意してください。

目安としては、対象の電路の使用電圧が低いほど、印加電圧も低めを選ぶのが一般的です。低い電圧の回路に対して不必要に高い印加電圧を選ぶと、絶縁の状態によっては機器や電線を傷める側に働くことがあります。逆に印加電圧が低すぎると、絶縁の弱い部分を十分に検出できないこともあります。迷った場合は、測定対象の機器・盤のメーカーが指定する印加電圧の目安に従うのが安全です。

数値が悪かった時の絞り込みと、季節・湿度の影響

全体で悪いのか、一部の分岐が悪いのかを切り分ける

測定値が基準を下回った場合、盤全体の絶縁が一様に弱っているとは限りません。まずは分岐を切り離して範囲を絞るのが定石です。下流の分岐をすべて切り離した状態で幹線側を測定し、値が回復するかを確認します。回復するなら原因は下流のどこかにあり、分岐を1つずつ戻しながら再測定して、どの分岐を戻すと値が悪化するかを絞り込みます。分岐が多い盤では、1つずつ戻すより半分だけ戻して測るほうが早く到達できます。設備トラブルの切り分け全般の考え方はブレーカがトリップする原因と調査手順とも共通する部分があります。

朝一番・梅雨時は値が下がることがある

絶縁抵抗の測定値は、湿度や結露の影響を受けて変動します。朝一番で盤内の温度差から結露が発生している場合や、梅雨のように湿度が高い時期は、同じ設備でも値が普段より低く出ることがあります。一度の測定値だけで「悪化した」と判断するのではなく、前回・前々回の測定値との比較(トレンド)で傾向を見るようにしてください。季節や天候による一時的な低下なのか、経年劣化による継続的な低下なのかは、この比較で見分けやすくなります。

まとめ:測り方より先に、切り離す手順を覚える

絶縁抵抗測定(メガー)は、停電・検電・放電・電子機器の切り離しという下準備を終えてから測定に入り、測定後も再度放電するという順番が骨格です。とくに制御盤では、PLCやインバータ、SPD、コンデンサなど高電圧の印加に耐えられない機器を測る前に必ず切り離すことが、一般的なメガー解説にはあまり出てこない、しかし現場では最も事故につながりやすいポイントです。判定基準値は電技省令第58条に定められた3区分(0.1MΩ・0.2MΩ・0.4MΩ)で決まっており、印加電圧の選び方は法令ではなく機器の仕様に沿って選びます。測定値が基準を下回った場合は、分岐を切り離しながら範囲を絞り、湿度や季節による一時的な変動は前回値との比較で見極めましょう。

測定値が基準を満たしているかどうかの判定は、区分を間違えやすい部分でもあるため、次のツールで確認しておくと確実です。