三菱PLCのデバイス種類まとめ|X・Y・M・L・D・T・Cの使い分け

ラダーで最初に詰まるのは命令ではなく「デバイス」

GX Works3を触り始めた頃、先輩のラダーを開いて固まった経験はないでしょうか。X、Y、Mまでは何となく分かる。でも突然LやSMが出てくると、「これは何? Mと何が違うの?」と手が止まる。命令(MOVやOUT)はヘルプを引けば書式が出てきますが、デバイスは「どの箱に何を入れるべきか」という設計の話なので、書式を調べても答えが出ません。

この記事では、三菱PLCの基本デバイスを「役割の地図」として1ページに整理します。前提はiQ-Rシリーズ(RCPU)です。FXシリーズなど他機種では採番ルールや仕様が異なる点があるので、その点は本文中でも触れます。なお、各デバイスの使用可能点数はCPUの機種やパラメータ設定で変わるため、この記事では点数には踏み込みません。まずは「何者か」を掴んでください。

基本デバイス一覧表

先に全体像です。デバイスは大きく「ビットデバイス(ON/OFFの1点)」と「ワードデバイス(数値を入れる箱)」に分かれます。

記号名前ビット/ワードざっくり役割代表的な使い所
X入力ビット外部からの入力信号押しボタン・センサ・リミットスイッチ
Y出力ビット外部への出力信号ランプ・リレー・電磁弁
M内部リレービットプログラム内部の汎用フラグ自己保持・条件成立フラグ
Lラッチリレービット停電保持用途の内部リレー電源OFF後も残したい状態
Bリンクリレービットネットワーク経由のビットデータCC-Link IE等の局間ビット交換
Dデータレジスタワード数値を入れる汎用の箱(16ビット)設定値・演算結果・生産数
Wリンクレジスタワードネットワーク経由のワードデータ局間の数値データ交換
Tタイマビット+現在値時間経過でON。条件OFFで現在値が戻る遅延起動・チャタリング対策
ST積算タイマビット+現在値条件OFFでも現在値を保持して積算稼働時間の積み上げ計測
Cカウンタビット+現在値入力の立ち上がり回数を数える生産数カウント・回数管理
SM特殊リレービットシステムの状態を示すビットSM400(常時ON)など
SD特殊レジスタワードシステムの情報が入るレジスタエラー情報・システム時刻など
K / H定数プログラム中に直接書く数値K100(10進)・H1F(16進)

他にもインデックスレジスタやファイルレジスタなど用途別のデバイスがありますが、まずはこの表の面々を押さえれば、若手が読む範囲のラダーはほぼ読めるようになります。以下、グループごとに掘り下げます。

XとY:実配線と結びつく唯一のデバイス

X(入力)とY(出力)は、この表の中で唯一「PLCの外の世界」とつながっているデバイスです。X0がONということは、入力ユニットのX0端子に実際に電圧がかかっている——つまり現場のどこかでボタンが押されたか、センサが反応したということ。Y0をONすれば、出力ユニットのY0端子から実際に信号が出て、リレーが動き、ランプが点きます。図面の端子番号とラダーのデバイス番号が1対1で対応する、いわばソフトとハードの境界線です。

ここでiQ-Rを触る上での重要な注意がひとつ。X・Yの採番は16進数です。X0、X1、…X8、X9、XA、XB、…XF、と進んで、XFの次がX10になります。「X9の次はX10」ではありません。X0〜XFで16点、これが1単位です。

FXシリーズ(8進採番でX7の次がX10)から来た人が特に混同しやすいポイントです。配線チェックのときに「X8ってどの端子?」で数え間違えると、入力の割付ミスにそのまま直結します。iQ-Rでは16点区切り、と体に入れてください。

MとL:内部リレーの使い分け

M(内部リレー)は、プログラム内部だけで使うON/OFFの汎用フラグです。外の端子とはつながっていません。「起動条件が全部そろった」「原点復帰が完了した」といった中間状態を持たせるのに使い、ラダーの中で圧倒的に登場回数が多いデバイスです。自己保持回路のコイルにMを使うのが典型で、基本パターンは自己保持回路のラダーの組み方で解説しています。また、Mに対してSET/RSTで状態を立てたり落としたりする書き方はOUTとSET/RSTの使い分けが参考になります。

L(ラッチリレー)は、停電保持の用途に使う内部リレーです。電源を切っても消したくない状態——たとえば「段取り替え済み」のような、翌朝も引き継ぎたいフラグ——の置き場所として使われます。ここで注意したいのは、停電時に保持されるかどうかはCPUのパラメータ設定(ラッチ設定)に依存することです。Mにもラッチ範囲を設定できるため、「L=保持、M=非保持」と丸暗記すると現場のプロジェクトで裏切られます。読むときは必ずそのプロジェクトのパラメータを確認してください。

新人のうちは「とりあえず全部M」で書きがちですが、「消えていい状態はM、消えては困る状態はラッチ設定されたデバイス」という視点を持つと、一歩進んだ整理ができます。なお、B(リンクリレー)はCC-Link IEなどのネットワークで局間のビットデータをやり取りするために使うデバイスです。単独のCPUで完結するプログラムなら出番は少ないですが、複数PLC構成のラダーで見かけたら「これはネットワーク越しの信号だ」と読み替えてください。

DとW:数値を入れる箱

D(データレジスタ)は数値を入れる汎用の箱で、1点が16ビットです。符号付きなら-32768〜32767の範囲を1点で扱えます。設定値、演算結果、生産数、タッチパネルとやり取りする数値——ワードデータの置き場所はほぼDです。

16ビットに収まらない大きな数値は、D連番の2点をペアにして32ビットとして扱います。たとえばDMOV命令でD0を指定すると、D0とD1の2点が使われます。ここを知らずにD1を別の用途に使ってしまい、「なぜか値が化ける」というのは初心者の定番の罠です。転送命令の実例はMOV/DMOV命令の使い方で詳しく解説しています。

W(リンクレジスタ)はDのネットワーク版で、局間のワードデータ交換に使うデバイスです。Bと同じく、複数PLC・リモート局構成のラダーで登場します。

もうひとつ、知っていると読めるラダーの幅が広がる小技が桁指定です。K4X0のように書くと、X0〜XFの16点のビットデバイスをまとめて1ワードとして扱えます(K1が4点=1ニブル単位)。ディジタルスイッチの読み込みや、ビット群の一括転送で使われる書き方なので、先輩のラダーで見かけても慌てないでください。

T・ST・C:時間と回数を扱うデバイス

T(タイマ)は「条件がONし続けた時間」を計るデバイスで、設定時間に達すると接点がONします。重要な性質は、計時中に条件がOFFすると現在値が戻ること。途中経過は積み上がりません。

ST(積算タイマ)はその逆で、条件がOFFしても現在値を保持し、次にONしたとき続きから積算します。現在値を戻すにはRST命令で明示的にリセットします。装置の稼働時間の積み上げのような用途はSTの出番です。長い時間を扱うLT(ロングタイマ)というデバイスもあります。

C(カウンタ)は入力の立ち上がり回数を数えるデバイスで、設定回数に達すると接点がONします。こちらもLC(ロングカウンタ)があります。タイマ・カウンタの書式や動作の詳細、設定値の単位まわりはタイマ命令OUT Tの使い方で掘り下げているので、実際に書く段階ではそちらを参照してください。

SMとSD:システムが用意している情報

SM(特殊リレー)とSD(特殊レジスタ)は、他のデバイスと毛色が違います。これはユーザーが値を入れる箱ではなく、システム側が状態を知らせてくれる窓です。感覚としては「自分で書き込むものではなく、読むもの」。

代表例がSM400で、これは常時ONの特殊リレーです。「スキャンごとに必ず実行したい命令」の実行条件として、ラダーの左端にSM400が置かれているのをよく見かけます。先輩のラダーで見慣れない接点SM400が延々と並んでいたら、「常にON=無条件実行の意味」と読んでください。SDにはエラー情報やシステム時刻などが入っており、異常処理や時刻記録のラダーで登場します。個々の番号の意味はマニュアルの特殊リレー・特殊レジスタ一覧で確認するのが確実です。

使い分けの実務感覚:新人がやりがちな迷い

デバイスの正体が分かると、次に迷うのは「設計としてどう使い分けるか」です。よくある迷いを2つ挙げます。

「Xを直接条件に使うか、一度Mに受けるか」。先輩のラダーで、X0をそのまま使わず「X0 → M100」と一度内部リレーに受け直してから使っている構成を見て、意味が分からなかった人は多いはずです。入力の受け直しには「信号の意味に名前を付け直せる」「入力割付が変わってもラダーの修正箇所を1か所にできる」といった狙いがありますが、やるかどうかは現場・会社の標準によります。自分の判断で流儀を変えるのではなく、まずその職場の既存ラダーの流儀に合わせるのが正解です。

「デバイス番号をどこから使うか」。Mを適当な番号から使い始めると、後から見た人が「この番号帯は何のグループ?」と迷子になります。多くの現場では「M100番台は運転条件、M200番台は異常」のように番号帯で用途を分けるルールがあります。これも会社標準がすべてに優先するので、新しい現場に入ったらまずデバイス割付表(コメント一覧)を確認する癖をつけてください。

共通して言えるのは、デバイスの使い分けは文法問題ではなく設計問題だということ。文法として動くかどうかではなく、「半年後に他人が読んで意味が分かるか」で判断するのが実務の感覚です。

まとめ

三菱PLC(iQ-R)の基本デバイスを整理しました。要点です。

  • X・Y:実配線とつながる境界線。採番は16進(XFの次がX10)。FX系の8進と混同しない
  • M・L:内部の汎用フラグ。停電保持はパラメータのラッチ設定に依存するので丸暗記しない
  • D・W:数値の箱。Dは1点16ビット、32ビットはD連番2点ペア(DMOVでD0・D1)
  • T・ST・C:Tは条件OFFで現在値が戻る、STは積算してRSTで戻す、Cは回数を数える
  • SM・SD:システム情報の窓。SM400=常時ONは頻出。「読むもの」という感覚で
  • 使い分け:入力の受け直しや番号帯のルールは会社標準に合わせる。判断基準は「他人が読めるか」

デバイスという「箱」の地図ができたら、次はその箱を操作する「命令」です。GX Works3 命令語の早見表に、接点・コイルから転送・演算までの命令を用途別にまとめているので、ラダーを読みながら手元に置いて使ってください。

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