展開接続図(シーケンス回路図)の読み方:記号と読む順番を基礎から整理
展開接続図が読めると、何が変わるか
制御盤の扉を開けると、配線の束とともに「展開接続図」と書かれた図面が貼ってあることがある。初めて見ると記号だらけで何が何だかわからないが、読み方のルールは意外とシンプルだ。
この記事では、展開接続図(シーケンス回路図)の基本記号・読む順番・よくある回路パターンを順に整理する。一度ルールを理解すれば、盤内トラブルの原因を回路図から追えるようになる。
展開接続図とは
展開接続図は制御回路図の一種で、機器の動作シーケンス(順序・条件)を記号で表したものだ。「シーケンス回路図」とも呼ばれ、制御盤の設計図として広く使われている。
現場でいつ読むか
- 盤内ラベルの確認:端子番号・線番号が展開接続図の線番と対応しているかチェックする
- 施工図の読み込み:新設盤の配線前に回路の流れを把握する
- トラブルシュート:機器が動かないとき、どの接点が閉じていないかを回路図で追う
主回路図との違い
主回路図はモータや変圧器への電力ルートを表す図で、大電流が流れる経路を描く。一方、展開接続図は制御回路(コイルを動かすための小電流回路)を表す。制御盤の中に何が入っているかの全体像は制御盤の中に何が入っている?主要機器の役割と配置をざっくり整理で確認できる。
基本記号の読み方
展開接続図で使う記号は数種類に絞られる。まずここを押さえれば、ほとんどの回路が読める。
a接点(常開接点)
通常は開いており(OFF)、コイルに電流が流れると閉じる(ON)。記号は線の途中に小さな開口がある形。押しボタンの「起動ボタン」や補助接点に使われる。
b接点(常閉接点)
通常は閉じており(ON)、コイルに電流が流れると開く(OFF)。記号は線を斜めに横切る棒がある形。停止ボタンやサーマルリレーの過負荷接点に使われる。
コイル(駆動部)
電磁接触器や補助リレーを動作させる部分。記号は丸(○)で表し、回路の右側(母線に近い位置)に置かれることが多い。コイルに電流が流れると、そのコイル名を持つ接点がすべて動作する。
タイマ接点の記号
タイマリレーには動作に時間遅れがある接点が使われる。オンディレイ(コイルONから一定時間後に接点動作)とオフディレイ(コイルOFFから一定時間後に接点動作)の2種類が基本だ。タイマリレーの選び方と使い方の詳細はタイマリレー(オンディレイ・オフディレイ)の使い方と選び方を参照してほしい。
- オンディレイ接点:接点記号の上または下に時計マーク(または「T↑」)
- オフディレイ接点:同様のマークで表記が異なる(図面によって凡例を確認する)
主回路と制御回路の区別
展開接続図は制御回路のみを描く。主回路(MCの主接点・サーマルリレー本体など)は別の主回路図に描かれる。展開接続図に出てくる接点はすべて「補助接点」か「制御用の接点」と考えてよい。
展開接続図を読む順番
展開接続図には読む順番のルールがある。このルールを知っていると、どんな回路でもスムーズに追えるようになる。
母線(電源ライン)の概念
展開接続図の左端と右端には縦線が引かれている。これが「母線」で、左が電源側(L)・右がゼロ側(N)を表す。すべての横線(回路)はこの2本の縦線の間に引かれる。
上から下へ読む原則
回路は上から下へ番号順に並んでいる。まず一番上の横ラインから読み始め、順に下へ追っていくのが基本だ。
横1行 = 1回路の考え方
左母線から右母線まで横に引かれた1本のラインが、1つの動作(コイル1個またはランプ1個など)に対応する。「この行が成立するとどのコイルが動くか」を意識しながら読む。
コイル名で接点を追う
右端にあるコイルの名前(MC1・T1など)をメモしながら読み進める。別の行に同じ名前の接点が出てきたら、そのコイルが動いたときに一緒に動作する接点だとわかる。この「コイル名 → 接点を探す」の繰り返しが回路の読み方の核心だ。
具体例:電磁接触器MC1の起動回路を読む
最もよく見る基本的な回路を例に、実際の読み方を追ってみる。
起動ボタン → 停止ボタン → MC1コイル
左母線から順に、起動ボタン(a接点・常開)と停止ボタン(b接点・常閉)が直列につながり、右端にMC1のコイルがある。起動ボタンを押すとa接点が閉じ、停止ボタンのb接点は通常閉じているため、回路が成立してMC1コイルに電流が流れる。
電磁接触器(MC)の仕組みと選定基準については電磁接触器(MC)とは?仕組みと選び方の基準を現場目線で整理で詳しく説明している。
MC1補助接点(自己保持)の位置と役割
起動ボタンの横(並列)に、MC1の補助a接点が接続されていることが多い。これが「自己保持回路」だ。起動ボタンを離してもMC1の補助接点が閉じているため、コイルへの通電が維持される。自己保持回路の組み方の詳細は電磁接触器の補助接点:自己保持回路と寸動回路の作り方を参照してほしい。
サーマルリレー接点の役割
停止ボタンの右側(またはコイル直前)にサーマルリレーのb接点が入っていることがある。モータに過負荷がかかるとサーマルリレーが動作してこのb接点を開き、MC1コイルへの電流を遮断する。電磁開閉器(MC+サーマルリレーの組み合わせ)については電磁開閉器(MS)とは?MCとサーマルリレーの組み合わせを理解するで整理している。
よく見るパターンと読み方のコツ
ページをまたぐ接点の追い方
回路図が複数ページにわたる場合、コイルと接点が別ページに分かれることがある。この場合、コイル記号の近くに「接点が何ページにあるか」を示す数字(ページ参照番号)が記載されていることが多い。コイル名を手掛かりに、該当ページの接点を探す。
線番号の読み方
展開接続図の各線には「線番号」が振られている。線番号は実際の配線の番号と一致しており、盤内の電線マーキングと対応している。「回路図上の線番 = 盤内のマーキング番号」と覚えておけば、現物と図面を照合するときに迷わない。
線番と接続先の確認には端子台の配線図も使う。接続関係を整理したい場合は制御盤全体の構成から見直すと理解が深まる。制御盤の概要については制御盤の中に何が入っている?主要機器の役割と配置をざっくり整理が参考になる。
まとめ
展開接続図が読めると、盤内トラブルの切り分け速度が大きく上がる。「どのコイルが動いていないか」「どの接点が開いたままか」を回路図から追えるようになるからだ。
- 左右の母線の間に横ラインが並ぶ構造で、上から順に読む
- a接点(常開)・b接点(常閉)・コイルの3記号が基本
- コイル名で対応する接点を追うのが読み方の核心
- 自己保持回路はa接点の並列接続、停止はb接点の直列挿入で成立する
- 線番号は実際の配線と一致しており、現物との照合に使う
