セーフティライトカーテンの安全距離の計算方法|S=K×T+Cの読み方と計算例
※この記事は初心者に向けて書いています。
セーフティライトカーテンとは|電気的検知保護設備(ESPE)・Type4
- 安全距離が足りないこと:人体が検出領域に入ってから機械が止まるまでの間に、危険区域へ届いてしまいます(出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020)。
- ミューティング中は、ライトカーテンの安全機能が無効になること:ミューティング装置の信号が入っている間、ライトカーテンの安全機能は働きません。その間の安全は、機械システム全体で別に確保します(出典: GL-R ユーザーズマニュアル 247035「危険」)。
- リセットの手段を置く位置:危険区域全体が見えて、危険区域内からは操作できない位置に設けます(出典: GL-R ユーザーズマニュアル 247035)。
- 設置後の確認を省くこと:設置したら、マニュアルのテスト手順で、テストピースが全検出領域で検出されることを確認します(出典: GL-R ユーザーズマニュアル 247035)。
セーフティライトカーテンは、検出領域に人体が入ったことを検出して、機械を止めるための安全機器です。
どの大きさの物を検出できるかは機種で決まっていて、指・手を検出するものから、人体を検出するものまであります(後の章で出てくる「最小検出体 d」がこれです)。
規格の上では、電気的検知保護設備(ESPE)の一つです。
例としてキーエンス GL-R シリーズのユーザーズマニュアルでは、適合規格として IEC 61496-1(Type4 ESPE)と IEC 61496-2(Type4 AOPD)が挙げられています(出典: GL-R ユーザーズマニュアル 247035)。どの規格に適合しているかは、使う機種のマニュアルで確認してください。
ここで押さえておきたいのは、ライトカーテンは「検出したら止める」機器で、検出してから機械が止まりきるまでには時間がかかることです。
人体が検出領域に入ってから機械が止まるまでの間に危険区域へ届いてしまえば、ライトカーテンを付けた意味がありません。
そのため、ライトカーテンは危険区域から安全距離をとって設置します。この記事では、その安全距離の計算方法を扱います。
ライトカーテンの信号を受けて機械を止める側の仕組みは、セーフティリレーとは?仕組み・配線の基本と選び方【初心者向け安全制御入門】で整理しています。
受ける側をセーフティリレーにするか、セーフティコントローラにまとめるかは、セーフティリレーとセーフティコントローラの違い|いつ1台に集約すべきか【キーエンスGC-1000・オムロンG9SP】が判断の目安になります。
同じ「止めるための機器」の仲間に非常停止ボタンがあります。こちらは非常停止ボタンの選定と設置ルール|直接開路動作・色形状・配置の基準で取り上げています。
また、止めるための信号を一般のPLCのプログラムに任せない理由は、非常停止を例に非常停止はなぜPLCを通してはいけないのか|ハードワイヤ設計で装置を止める理由で解説しています。
※本記事は入門のための概説です。実際の選定・設計・施工は、機械のリスクアセスメント、使う機種の取扱説明書、該当する規格に従って行ってください。
安全距離の考え方|S=K×T+C
安全距離(最小距離)は、ISO 13855 などの規格で規定されています。
ここでは ISO 13855 に基づく一般的な考え方として、キーエンスのセーフティサポートガイドブックに沿って式を読みます(出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020「10 ライトカーテンの設置と安全距離」)。
S=K×T+C
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| S | 最小距離(安全距離) | mm |
| K | 接近速度 | mm/秒 |
| T | 総合システム停止性能=ライトカーテンの最大応答時間+機械の最大停止時間 | 秒 |
| C | 侵入距離 | mm |
出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020
式を言葉にすると、人が接近速度 K で近づくとして、人体が検出されてから機械が止まりきるまで(ライトカーテンの応答時間+機械の停止時間)の T 秒の間に進む距離(K×T)に、侵入距離 C を足したものです。
K と C の値は、人がどの方向から近づくか(垂直方向・水平方向)と、ライトカーテンの最小検出体 d(mm)によって変わります(水平方向では、検出領域の高さ H も C に効きます)。次の2つの章で、方向ごとに見ていきます。
同じ S=K×T+C の式は、扉に付けるドアスイッチ(ロックなし)の安全距離でも使います。扉の場合の計算例はセーフティドアスイッチとは|4つのタイプ・ロックの有無の選び方と、無効化させない付け方で紹介しています。
この記事の数字は、考え方を示すための計算例です。この値で設置してよいという意味ではありません。実際の設備では、使う国・地域の規格・規制・法律で定められた安全距離を確保して設置してください(出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020)。
垂直方向から近づく場合|指・手の検出と人体の検出の計算例
垂直方向からの接近では、最小検出体 d が 40mm 以下か、40mm を超えて 70mm 以下かで、K と C の決め方が分かれます(出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020)。

d≦40mm(指・手の検出)
- K=2000mm/秒
- C=8×(d−14)、ただし C≧0
この場合は、S に次の条件が付きます。
- K=2000mm/秒、C=8×(d−14)(ただし C≧0)で S を計算する。
- S は 100mm 以上とする(S≧100mm)。
- S が 500mm を超えたら(S>500mm)、K=1600mm/秒 で計算し直す。
- 計算し直した結果が 500mm 以下(S≦500mm)なら、S=500mm とする。
40<d≦70mm(人体の検出)
- K=1600mm/秒
- C=850mm(標準的な腕の長さとされる値)
計算例(垂直方向)
機種と応答時間は、例としてキーエンス GL-R シリーズの値です。t1 はライトカーテンの最大応答時間、t2 は機械の最大停止時間で、T=t1+t2 です。
| 例 | 機種(例:キーエンス GL-R シリーズ) | d | K | t1 応答 | t2 停止 | C | S |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 垂直①-1 | GL-R60H | 25mm | 2000 | 0.0157秒 | 0.1秒 | 8×(25−14)=88 | 2000×0.1157+88=319.4mm |
| 垂直①-2 | GL-R08L | 45mm | 1600 | 0.0069秒 | 0.1秒 | 850 | 1600×0.1069+850=1021.04mm |
出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020(計算例)
①-1:d=25mm は 40mm 以下なので、指・手の検出の式を使います。K=2000、C=8×(25−14)=88、T=0.0157+0.1=0.1157秒で、S=2000×0.1157+88=319.4mm。100mm 以上で 500mm を超えていないので、K=1600 で計算し直す必要はありません。
①-2:d=45mm は 40mm を超えて 70mm 以下なので、人体の検出の式を使います。K=1600、C=850、T=0.0069+0.1=0.1069秒で、S=1600×0.1069+850=1021.04mm です。
検出領域の上方を迂回できる場合
検出領域の上方を迂回して危険区域に近づける場合は、別の式で計算し、大きいほうを S とします(出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020)。
その式はこの記事では扱いません。規格やメーカーの資料で確認してください。
水平方向から近づく場合の計算例
水平方向からの接近では、次の値を使います(出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020)。
- K=1600mm/秒
- C=1200−0.4H、ただし C≧850mm
- H:基準面から検出領域までの高さ(mm)
H の範囲などの条件は、ガイドブックや規格の資料で確認してください。
計算例(水平方向)
| 例 | 機種(例:キーエンス GL-R シリーズ) | d | K | t1 応答 | t2 停止 | C | S |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 水平②-1 | GL-R30L(H=200mm) | 45mm | 1600 | 0.0105秒 | 0.1秒 | 1200−0.4×200=1120 | 1600×0.1105+1120=1296.8mm |
出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020(計算例)
②-1:H=200mm なので C=1200−0.4×200=1120 で、850mm 以上の条件を満たしています。T=0.0105+0.1=0.1105秒で、S=1600×0.1105+1120=1296.8mm です。
同じ d=45mm・同じ K=1600 でも、垂直方向の①-2(1021.04mm)より、水平方向の②-1(1296.8mm)のほうが S は大きくなっています。違いの大部分は C(850 と 1120)です。近づく方向が違えば、同じ考え方の式でも答えは変わるので、自分の設備がどちらに当たるかを先に確かめてから計算します。
止まるまでの時間が効く|停止時間1秒=2000mm
S=K×T+C の T には、ライトカーテンの最大応答時間と、機械の最大停止時間の両方が入ります。
ガイドブックでは、その効き方を次のように示しています(出典: キーエンス セーフティサポートガイドブック 247020)。
- K=2000 のとき、機械の最大停止時間が 1秒増えると、S は 2000mm 増える
- K=2000 のとき、ライトカーテンの応答時間が 1ms 増えると、S は 2mm 増える
計算例①-1 でも、T=0.1157秒のうち、ライトカーテンの応答時間は 0.0157秒、機械の停止時間は 0.1秒です。
つまりこの例では、安全距離を左右しているのはライトカーテンの応答時間よりも機械が止まりきるまでの時間のほうです。止まるのに時間がかかる機械ほど、ライトカーテンを危険区域から離す必要があります。
裏返すと、T に入れる機械の最大停止時間を実際より短く見積もると、計算上の S が足りなくなり、冒頭の注意の1つ目「安全距離が足りない」につながります。
ミューティング・リセット・設置後の確認(危険)
安全距離を正しく計算しても、使い方や設置後の確認を誤れば、ライトカーテンは人を守れません。ここでは GL-R シリーズのユーザーズマニュアルにある注意を取り上げます(出典: GL-R ユーザーズマニュアル 247035)。他社の機種の扱いは、各社の取扱説明書で確認してください。
ミューティング中は安全機能が無効
ミューティング装置の信号が入っている間、ライトカーテンの安全機能は無効になります(出典: GL-R ユーザーズマニュアル 247035「危険」)。
ミューティングとは、ミューティング装置の信号が入っている間、ライトカーテンの安全機能を無効にすることです。
その間の安全は、ライトカーテンに頼らず、機械システム全体で別に確保する必要があります。ミューティングを使う場合の条件は、使う機種のマニュアルで確認してください。
リセットの手段は、危険区域全体が見えて、中から操作できない位置に
リセットの手段は、危険区域全体が見えて、危険区域内からは操作できない位置に設けます(出典: GL-R ユーザーズマニュアル 247035)。
リセットする人が危険区域の中を見渡せる位置で、なおかつ中にいる人がリセットできない位置、ということです。
設置後はテストピースで全検出領域を確認する
設置したら、マニュアルのテスト手順に従って、テストピースが全検出領域で検出されることを確認します(出典: GL-R ユーザーズマニュアル 247035)。
テストピースとテストの手順は、使う機種のマニュアルに従ってください。
よくある質問(FAQ)
Q1. セーフティライトカーテンとは何ですか?
A. 検出領域に人体が入ったことを検出して、機械を止めるための安全機器です。規格の上では電気的検知保護設備(ESPE)の一つで、例えばキーエンス GL-R シリーズのユーザーズマニュアルでは、適合規格として IEC 61496-1(Type4 ESPE)と IEC 61496-2(Type4 AOPD)が挙げられています。人体が検出領域に入ってから機械が止まるまでに危険区域へ届かないよう、安全距離をとって設置します。
Q2. ライトカーテンの安全距離はどう計算しますか?
A. ISO 13855 に基づく基本式 S=K×T+C で考えます。S は最小距離(mm)、K は接近速度(mm/秒)、T は総合システム停止性能(秒)でライトカーテンの最大応答時間と機械の最大停止時間を足したもの、C は侵入距離(mm)です。K と C の値は、人がどの方向から近づくか(垂直方向・水平方向)と、ライトカーテンの最小検出体 d(水平方向では検出領域の高さ H も)によって変わります。
Q3. 指・手を検出するライトカーテンの安全距離の計算方法は?
A. 垂直方向から近づく場合で、最小検出体 d が 40mm 以下なら、K=2000mm/秒、C=8×(d−14)(ただし C≧0)で S を計算します。S は 100mm 以上とし、S が 500mm を超えたら K=1600mm/秒で計算し直し、計算し直した結果が 500mm 以下なら S=500mm とします。ガイドブックの例では、d=25mm、ライトカーテンの応答時間 0.0157秒、機械の停止時間 0.1秒で、S=2000×0.1157+88=319.4mm です。この数字は考え方を示すための計算例で、この値で設置してよいという意味ではありません。
Q4. ライトカーテンの安全距離の規格は何ですか?
A. 安全距離(最小距離)は、ISO 13855 などの規格で規定されています。実際の設備では、使う国・地域の規格・規制・法律で定められた安全距離を確保して設置します。ライトカーテン本体の規格の例としては、キーエンス GL-R シリーズの適合規格に IEC 61496-1(Type4 ESPE)と IEC 61496-2(Type4 AOPD)が挙げられています。
Q5. ライトカーテンのミューティングとは何ですか?
A. ミューティング装置の信号が入っている間、ライトカーテンの安全機能を無効にすることです。ミューティング中は、ライトカーテンの安全機能が無効になっています。その間の安全は、ライトカーテンに頼らず、機械システム全体で別に確保する必要があります。
まとめ
- セーフティライトカーテンは、検出領域に人体が入ったことを検出して機械を止める安全機器。検出してから機械が止まりきるまでに危険区域へ届かないよう、安全距離をとって設置する。
- 安全距離は ISO 13855 などで規定。基本式は S=K×T+C。T=ライトカーテンの最大応答時間+機械の最大停止時間。
- 垂直方向で d≦40mm なら K=2000、C=8×(d−14)(C≧0)。S≧100mm、S>500mm なら K=1600 で計算し直し、その結果が S≦500mm なら S=500mm。40<d≦70mm なら K=1600、C=850mm。
- 水平方向は K=1600、C=1200−0.4H(C≧850mm)。
- 検出領域の上方を迂回して近づける場合は、別の式で計算し、大きいほうを S とする。
- K=2000 なら、機械の停止時間1秒で S は 2000mm 増える。応答時間1msなら 2mm。止まるまでの時間が安全距離を大きく左右する。
- ミューティング中は安全機能が無効。その間の安全は機械システム全体で確保する。リセットの手段は危険区域全体が見えて中から操作できない位置に。設置後はテストピースで全検出領域を確認する。
- この記事の数字は計算例。実際の設備では、使う国・地域の規格・規制・法律で定められた安全距離を確保する。
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