電磁接触器が入らない・唸る時の切り分け|コイル電圧を起点に4症状で追う
指令を切ったのに電磁接触器が開かない状態は、非常停止を押しても負荷が止まらないことを意味します。接点の溶着が疑われるため、上位のブレーカで電源を切るまで、その装置は「止められない機械」として扱ってください。他の3症状とは危険度が違います。
電磁接触器(MC・マグネット)まわりのトラブルは、ひとまとめに「マグネットの調子が悪い」と言われがちですが、実際には入らない・唸る・すぐ落ちる・切れないの4症状で、疑う場所がまったく違います。そして4つとも、切り分けの起点は同じ「コイル端子に、正しい電圧が来ているか」です。
この記事では、その1点の測定から枝分かれさせる形で切り分け手順を整理します。電磁接触器そのものの構造や選び方は電磁接触器(MC)とは?仕組みとコイル電圧・主接点容量・補助接点の選び方を、サーマルリレーと組み合わせた電磁開閉器としての扱いは電磁開閉器(MS)とは?MCとサーマルリレーの組み合わせを参照してください。
切り分けの起点|コイル端子の電圧を測る
電磁接触器は、コイルに電圧をかけると電磁石が鉄心を吸い付け、その動きで主接点が閉じる機器です。したがって「コイルに電圧が来ているか」で、原因が制御回路側なのか接触器本体側なのかが真っ二つに分かれます。ここを測らずに本体を交換すると、同じ症状が再発します。
測るのはコイル端子(一般にA1・A2と表記されます)の間の電圧です。指令を出している状態(本来なら入るべき状態)で測るのがポイントです。テスターの当て方はテスターの使い方【制御盤編】で扱っています。
コイル端子の電圧測定は、通電した盤の中にテスター棒を入れる作業です。電流(A)レンジのまま当てると短絡します。レンジが電圧側になっていることを目視で確認し、片手で測る・端子以外に触れさせないなど、活線作業の基本を守ってください。制御電源がAC200Vの装置では、感電すれば重篤な事故になります。
結果は2通りです。
- 電圧が来ていない → 制御回路側の問題。接触器は無実です。指令が届いていない理由を上流にたどります。
- 電圧が来ている(または来ているが低い)→ 接触器本体か、電源容量の問題。症状別に本体を見ます。
症状①:まったく入らない(音もしない)
コイルに電圧が来ていない場合=制御回路をたどる
接触器は正常で、指令が届いていません。制御回路は直列に並んだ条件の連なりなので、どれか1つでも開いていればコイルに電圧は届きません。上流から順に見ます。
- 非常停止・安全リレーが復帰していない:装置全体が安全側で止まっているだけ、というケース。まずここを確認します。詳しくは非常停止が復帰しない時の切り分け手順へ。
- サーマルリレーがトリップしている:サーマルのb接点が開いて制御回路を切っています。リセットする前に、なぜ働いたのかを確認してください(サーマルリレーがトリップした時の対処)。
- インターロックが効いている:正転逆転回路のように、相手方が入っているとこちらは入れない構成では、相手が落ちきっていないと入りません。考え方はインターロック回路とは?で扱っています。
- 自己保持が成立していない:押しボタンを押している間だけ入り、離すと落ちる場合は、自己保持用の補助接点(またはその配線)が働いていません。
- PLC出力が出ていない:PLCで駆動している場合は、出力側の切り分けに移ります(PLCの出力が出ない時の切り分け手順)。
- 制御回路のヒューズ切れ・端子の緩み:単純ですが定番です。
コイルに電圧が来ているのに入らない場合
ここまで来て初めて、接触器本体を疑います。
- コイルの断線・焼損:電源を切った状態でコイル端子間の抵抗を測ります。導通がまったくなければ断線です。焦げた臭いや、コイル周りの変色があれば分かりやすい兆候です。
- コイル電圧の仕様違い:交換したばかりで入らない場合に疑います。AC100V用のコイルにDC24Vを与えても入りませんし、その逆は焼損します。銘板のコイル電圧表記と、実際に加えている電圧が一致しているかを確認します。
- 機械的な固着:長期間動かしていない接触器や、異物を噛んだ接触器が動かなくなることがあります。
症状②:唸る(ブーンという音がして、入りきらない)
唸っているということは、コイルには電圧が来ているということです。電磁石は吸引しようとしているのに、鉄心が最後まで密着しきっていない。その隙間で振動が起きている音です。原因は大きく3つに分かれます。
原因1:コイル電圧が不足している
もっとも多い原因です。定格に対して電圧が足りないと、吸引力が閉じきるところまで届きません。疑う先はこの3つです。
- 電圧降下:制御線が長い、細い、あるいは中継が多い装置で起きます。コイル端子で実測した電圧が、電源側の電圧より明らかに低ければこれです。
- 電源容量の不足:接触器のコイルは、投入の瞬間に定常時よりずっと大きな電流を要求します。複数の接触器が同時に入るタイミングだけ電圧が落ちて唸るという症状は、電源の容量不足を示しています。DC24V駆動の装置なら、パワーサプライの容量と保護動作を確認します(パワーサプライとは?仕組みと選び方)。
- 接点の接触抵抗:コイルへの給電経路にあるリレーの接点が荒れていると、そこで電圧を落とします。
「常時は入るのに、他の機器が動いた瞬間だけ唸る」という条件つきの症状は、ほぼ電圧・容量の問題です。唸っている最中にコイル端子の電圧を実測すると決着がつきます。
原因2:鉄心の接触面に異物・汚れ・錆がある
鉄心の合わせ面に切粉や埃、油分、錆が挟まると、密着できずに隙間が残ります。粉塵の多い環境や、屋外・高湿度の盤で起きやすい症状です。
原因3:くま取りコイル(シェーディングコイル)の破損 ※交流駆動の場合
交流でコイルを駆動する接触器には、鉄心に埋め込まれた小さな短絡環が付いています。交流は1周期の中で電流がゼロを通るため、そのままでは吸引力が周期的に抜けて振動します。この環がその抜けを埋めて、連続的に吸い付けています。これが割れると、電圧が正常でも唸ります。
電圧が正常で、接触面もきれいなのに唸り続ける交流駆動の接触器は、この可能性があります。この場合は本体交換です。
唸りを放置するとどうなるか
「音は気になるけど動いてはいる」と放置されがちですが、唸っている接触器は主接点の接触圧も足りていない状態です。接触圧が下がると接触抵抗が上がり、そこが発熱します。発熱は接点をさらに荒らし、最終的に焼損か溶着に向かいます。唸りは、接点が焼ける前触れとして扱ってください。
唸りは「音のトラブル」ではなく「接触圧のトラブル」。放っておくと発熱 → 接点荒れ → 焼損・溶着という筋書きに乗る。
症状③:入るが、すぐに落ちる
一度は吸引するのに保持できないパターンです。
- 自己保持が成立していない:押しボタンを押している間だけ入るなら、自己保持経路(補助接点とその配線)を確認します。補助接点の接触不良、配線の外れ、接点の選び間違い(a接点とb接点の取り違え)が定番です。
- 投入時に電圧が落ちている:投入の瞬間の電流で電源が引っ張られ、保持できる電圧を割り込むパターン。症状②の原因1と同じ根です。
- 後段の保護が働いている:入った直後にサーマルが動作している、あるいは過電流で上位のブレーカが切れている場合。この場合は接触器ではなく負荷側の問題です(モーターが回らない・唸る時の原因切り分け、ブレーカがトリップする原因と調査手順)。
- インターロックが後から効いている:相手方が入ることで、こちらが強制的に落とされている構成。
症状④:切れない(指令を切っても落ちない)
冒頭に書いたとおり、4症状のなかでこれだけ危険度が別格です。
まずコイル端子の電圧を測ります。電圧が残っていれば制御回路側——指令が切れていない、自己保持が切れていない、あるいは接点が固着した補助リレーが残っているという話になります。
電圧が来ていないのに主接点が閉じたままなら、接点の溶着です。過大な電流の開閉、短絡電流の通過、あるいは寿命末期の接点荒れが原因で、接点どうしが溶けてくっついた状態です。
溶着した接触器は交換以外に対処がありません。叩いて外れたように見えても、接点は既に大きく損傷しており、次に同じことが起きます。そして重要なのは、この状態が非常停止も安全リレーも無力化するという点です。安全リレーがフィードバック入力で溶着を検出してリセットを拒否している場合、それは正しい動作であり、リセットを試すのではなく交換で応えるべき症状です(非常停止が復帰しない時の切り分け手順)。
溶着に至るまでの寿命の考え方は電磁接触器・リレーの寿命と交換時期の目安で整理しています。
まとめ
電磁接触器のトラブルは、コイル端子の電圧を1回測ることで、制御回路側か本体側かに切り分けられます。そこから症状別に降りていきます。
- 入らない:電圧なし=制御回路(非常停止・サーマル・インターロック・自己保持)/電圧あり=コイル断線か仕様違い
- 唸る:ほぼ電圧不足。次に鉄心の汚れ、交流駆動ならくま取りコイルの破損。放置すると接点が焼ける
- すぐ落ちる:自己保持の不成立か、投入時の電圧降下
- 切れない:溶着の疑い。装置を止め、交換する。叩いて直すものではない
本体交換で症状が消えても、電圧不足や電源容量の不足が原因だった場合は新品の接触器が同じ道をたどります。唸りや落ちるが再発するなら、接触器ではなく電源側を見てください。
