原点復帰しない・原点がズレる時の切り分け|「始まらない」「止まらない」「ズレる」で原因は別物

この記事は「現場での切り分け」の話です。原点復帰の方式やパラメータ名は機種で異なります
原点復帰の動き方は、サーボアンプ・位置決めユニット・コントローラの機種と、選択されている原点復帰方式によって変わります。この記事では方式が何であっても共通して効く「症状の分け方と、見る順番」を扱います。個々のパラメータ名や設定値は、必ずお使いの機種のマニュアルで確認してください。
なお、原点復帰をラダーでどう組むか(設計側の話)ステップシーケンスのラダーで扱っています。この記事はすでに動いていた装置が原点復帰しなくなったときの切り分けです。

朝いちばんで装置を立ち上げたら原点復帰が終わらない。あるいは原点復帰自体は完了するのに、そのあとの位置がすべてズレている。どちらも「原点復帰の異常」と呼ばれますが、この2つは原因がまったく別の場所にあります

原点復帰のトラブルは、症状を次の3つに分けるところから始めてください。ここを分けずに調べ始めると、パラメータを見るべき場面でセンサを疑い、センサを見るべき場面でパラメータを触る、という遠回りになります。

  • ① そもそも動き出さない(原点復帰を指令しても軸が動かない)
  • ② 動くが止まらない(探しに行ったまま止まらない、あるいは端まで行ってエラーになる)
  • ③ 完了するが位置がズレる(原点復帰は正常終了するのに、以降の動作位置が合わない)

以下、この3つの順に見ていきます。

① そもそも動き出さない — 原点復帰以前の問題であることが多い

指令を出しても軸がまったく動かない場合、原点復帰の設定はまだ疑う段階ではありません。「動ける状態になっていない」ことのほうが圧倒的に多いからです。次の順で見ます。

  • アラームが残っていないか:前回のアラームがリセットされないまま残っていると、指令は受け付けられません。まずアラームの有無と、その内容を確認します。サーボ側のアラームならサーボアンプのアラームの切り分けが先です。
  • サーボONになっているか:モータが励磁されていなければ動きません。非常停止や安全回路が入ったままだと、サーボONの条件が成立しません。
  • インターロックが成立しているか:「扉が閉まっていること」「他の軸が退避していること」など、装置側の条件が揃っていないと原点復帰は始まりません。装置の改造後に条件が1つ増えていたというのは実際によくある形です。
  • 指令そのものが出ているか:ここまで問題なければ、PLC側で原点復帰の指令が実際に出力されているかをモニタで確認します。出ていないなら、それは原点復帰の問題ではなくPLCの出力が出ない側の話になります。
「装置を止めた直後だけ動かない」なら残留の可能性
非常停止をかけた直後や、異常停止した直後だけ原点復帰を受け付けないなら、内部の状態(工程を保持しているメモリなど)が中途半端に残っていることが原因のことがあります。この「異常後にどこまでリセットするか」は装置の設計の話なので、ステップシーケンスのラダーの考え方が参考になります。

② 動くが止まらない — 原点を「見つけられていない」

探しに行くのに止まらない、あるいは端まで行ってエラーで止まる。これは原点の目印を検出できていない状態です。目印になっているのは多くの場合、原点センサ(近点ドグ)です。

見る順番はこうです。

  • センサが反応しているか(手で確認):いちばん確実な確認は、センサの前に検出物を当ててみて、センサ本体の表示灯が点くかを見ることです。ここで点かないならセンサか配線、点くのにコントローラ側で入らないなら配線か入力側、という分岐がその場で決まります。
  • コントローラ側で入力が入っているか:センサは点いているのに信号が届いていないなら、配線・端子の緩み・入力ユニットを疑います。この切り分けの手順はPLCの入力が入らないと共通です。
  • ドグの位置がずれていないか:取り付けのネジが緩んで、ドグが少しずつ移動していることがあります。「だんだんおかしくなってきた」なら、まずこれです。
  • ドグが短すぎる/速度が速すぎる:探しに行く速度が速いのにドグが短いと、通過してしまって検出できないことがあります。速度のパラメータを変更した履歴、あるいはドグを作り直した履歴があるなら疑ってください。
  • センサの極性・種類違い:センサを交換した直後なら、NPN/PNPの違いや、a接点/b接点の違いを疑います。同じ形状でも出力の作法が違うものがあります。考え方はNPNとPNPの違いにまとめています。
  • センサ自体の劣化・汚れ:検出距離が落ちて、ぎりぎりで検出していたものが検出できなくなることがあります。センサの誤動作の確認手順が使えます。
「反対方向に動いていく」なら向きの設定
原点を探しに行く方向が逆で、原点から遠ざかっていく場合は、センサではなく原点復帰の方向設定か、モータの回転方向の定義が反転しています。モータやアンプを交換した直後、あるいは配線を組み直した直後なら、まずここを疑ってください。この状態でリミットまで突っ込ませると機械を痛めます。すぐに止めてから調べてください。

③ 完了するが位置がズレる — 目印は見えているが、基準の作り方が変わった

原点復帰そのものは正常に終わるのに、以降の位置が全部ずれている。この場合、センサは正常に検出できています。疑うのは「原点をどこに定めるか」の側機械側です。

  • ドグが物理的に動いた:②と同じくネジの緩みですが、こちらは検出はできるのでエラーにならず、ズレという形だけで出ます。エラーが出ないぶん気づきにくく、製品の寸法異常として先に発覚することがあります。
  • カップリング・プーリの緩み、キーの摩耗:モータは回っているのに機械側が同じだけ動いていない状態です。ズレ量が毎回一定でなく、だんだん増えるならこれを強く疑います。
  • ベルトの伸び・歯飛び:ベルト駆動なら、伸びや歯飛びで基準がずれます。
  • 原点位置の補正値(オフセット)が書き換わった:原点復帰後の基準位置をずらす補正の設定を、誰かが調整した履歴がないか確認します。「昨日誰かが微調整した」が原因のことは珍しくありません
  • 電池切れなどで設定が飛んだ:保持している設定が消えると、初期値に戻って位置がずれます。PLCのバッテリ交換と同じく、保持メモリを持つ機器は電池の管理対象です。
  • 機械側にぶつけた履歴がないか:衝突があると、機械の基準そのものが動いていることがあります。
「ズレ量が一定か、毎回変わるか」で切り分ける
これが③のなかでいちばん効く問いです。毎回同じだけずれているなら、原因は静的なもの(ドグの位置、補正値、設定の変化)です。ズレ量が毎回変わる・少しずつ増えるなら、原因は動的なもの(緩み、滑り、歯飛び、脱調)です。前者は設定を見て、後者は機械を触ってください。この1問で、探す場所が半分になります。

やってはいけないこと

  • 現在値を強制的に書き換えて「合わせる」:その場では直ったように見えますが、原因は何も直っていません。ドグが緩んでいるなら翌日また同じだけずれますし、緩みが進行していれば次はもっと大きくずれます。応急処置としてやるなら、必ず「なぜズレたか」を後で潰す前提で
  • 元の値を控えずにパラメータを触る:原点復帰のパラメータは互いに関係し合っています。戻せなくなると、正常だった頃の状態が永久に分からなくなります。変更前に必ず控える
  • ドグの位置を先に動かす:いちばん触りたくなる場所ですが、いちばん最後です。ドグを動かすと元の位置が分からなくなり、他の原因だったときに戻せません。先に、センサが反応しているかどうかを確認してください
  • 複数箇所を同時に直す:ドグも締め直し、パラメータも変え、カップリングも増し締めした——これで直っても原因が特定できません。次に再発したとき、また同じ時間を使います。
  • 逆方向に走っている状態で放置する:機械を壊します。方向がおかしいと分かった時点で止めてください。

まとめ|3つに分けてから調べる

原点復帰のトラブルは、症状を3つに分けた時点でほぼ勝負がついています。

  • ① 動き出さない → 原点復帰以前の問題。アラーム・サーボON・インターロック・指令の有無を順に見る。
  • ② 動くが止まらない → 目印を検出できていない。センサの表示灯 → コントローラの入力 → ドグの位置・長さ・速度、の順に見る。
  • ③ 完了するがズレる → 検出はできている。ズレ量が一定か毎回変わるかで、設定側か機械側かを分ける。

そして、どの症状であっても最初に効くのは「いつから」「何をした後か」の聞き取りです。センサを交換した、パラメータを調整した、装置を移設した、ぶつけた——直前の作業が分かれば、探す範囲は一気に狭まります。この考え方はPLCが動かない時のトラブルシューティング手順と共通の型です。

原点復帰をこれから設計する側の話(異常後に工程をどこまでリセットするか、原点復帰をシーケンスのどこに置くか)は、ステップシーケンスのラダーを参照してください。