制御盤の結露の原因と対策|冷える瞬間・水の入り口・ヒーターと換気の使い分け
- 結露によって生じる水滴は電気を通しやすく、ショートや漏電につながります(出典: 日東工業 熱関連コラム)。
- まず、濡れた盤内に手を入れる前に、盤の電源を切り、検電で活線でないことを確かめます。湿度の影響で絶縁抵抗が下がると、感電の危険性が高まります(出典: 日東工業 熱関連コラム)。検電の手順は検電器の使い方と活線確認の基本|「電気が来ていない」ことの確かめ方を参照してください。
- そのうえで、通電する前に乾かし、必要なら絶縁抵抗を確認します。測り方は絶縁抵抗測定(メガー)のやり方と注意点|測る前に外すもので解説しています。
制御盤の結露は、盤が冷える瞬間に起きます。夜の冷え込み、設備が止まって機器の発熱がなくなったとき、外の気温が急に下がったとき。盤の中の空気が冷やされて、抱えきれなくなった水分が水滴になって出てきます。
対策は、大きく分けて次の3つの組み合わせです。
- 水の入り口をふさぐ(底面の引込口・配線ピット。基礎まわりは、ふさぐ前に水の出口を作る)
- 中を温める・除湿する(盤用ヒーター・除湿器・除湿剤など)
- 換気で内外の差を縮める(換気扇付ルーバー・ルーバー)
どれが合うかは、盤がどこに置かれているかで決まります。この記事では、結露が起きる理由と起きやすいタイミング、水分の入り口、対策の選び方を、メーカーの技術資料をもとに整理します。制御盤の設計・保全に関わるFA若手向けの内容です。
結露はなぜ起きるか|温度が下がると相対湿度が上がる
空気が含んでいられる水蒸気の量(飽和水蒸気量)は、温度が下がるほど少なくなります。空気中の水分の量が同じでも、温度が下がると「含んでいられる量」に対する割合、つまり相対湿度が上がっていきます。そして最終的に相対湿度が100%を超えると結露が起こります(出典: オリムベクスタ「結露・湿度から守る!ヒーターの活用法」)。
メーカーの資料には、盤内を例にした次の計算が載っています(出典: オリムベクスタ「結露・湿度から守る!ヒーターの活用法」)。
| 場面 | 盤内の状態 | 水蒸気の量 |
|---|---|---|
| 日中 | 25℃・相対湿度65% | 15g/m3 |
| 深夜 | 5℃まで低下 | 5℃の飽和水蒸気量は6.81g/m3 |
| 差し引き | 15−6.81=8.19g/m3 が空気中にいられず、結露になる |
日中に何も起きていない盤でも、夜に冷えれば中の空気に含まれていた水分が行き場を失って、機器や盤の内面に水滴として現れる、ということです。盤の中に水を入れた覚えがなくても、盤内の空気そのものが水の出どころになります。
オムロンの資料も「現場においては、機器の温度と外気温の差によって結露が発生します。」としています(出典: オムロン 制御盤BASIC Vol.1)。結露対策は、この温度の差と、空気中の水分のどちらか(または両方)に手を打つ作業だと考えると整理しやすくなります。
盤で結露しやすい3つのタイミング
「盤が冷える瞬間」を、具体的な場面に置き換えると次の3つです。

① 夜間〜朝方の冷え込み・冬(冬型結露)
外気温の変化や盤内機器の発熱で盤内温度が変動すると、結露しやすくなります。特に冬季や、夜間から朝方にかけて気温が急に下がる時期です。これを冬型結露と呼んでいます(出典: 日東工業 熱関連コラム)。
② 設備停止中(機器の発熱が止まる)
オムロンの資料は、結露の発生例として「設備停止中に機器の発熱と気温差によって結露が発生」を挙げています(出典: オムロン 制御盤BASIC Vol.1)。動いている間は機器の発熱で温まっていた盤も、止まると発熱がなくなり、周囲の気温に向かって冷えていきます。止まっている間こそ結露が起きる、という点は見落としやすいところです。
③ 外気温の急低下・季節の変わり目
屋外盤で外気温が急に下がり、キャビネット内部に結露してメッキ部品に錆が出た事例が紹介されています(出典: 日東工業 熱関連コラム)。また、結露は梅雨だけでなく、季節の変わり目や気温・湿度の変化が大きい時期にも起きやすいとされています(出典: 日東工業 熱関連コラム)。
夏にも起きる(夏型結露)
雨天・梅雨など周囲の湿度が高いと、盤内に水分が入りやすくなります。夏場は、盤内の冷たい機器やキャビネット表面に結露することがあり、これを夏型結露と呼んでいます(出典: 日東工業 熱関連コラム)。結露は冬だけの話ではありません。
現場での読み替え|立ち上げのときに気を付ける
3つのタイミングを保全の目線で読み替えると、朝の始業時・週明け・長期停止明けの立ち上げが要注意の場面になります。夜の冷え込みと設備停止が重なった直後だからです。絶縁抵抗の値も湿度や結露で変動し、朝や梅雨どきは低く出ることがあります(絶縁抵抗測定(メガー)のやり方と注意点|測る前に外すもの)。
結露が盤に起こすこと
結露の影響は、すぐに出るものと、時間をかけて進むものに分かれます。
| 起きること | 中身 | 出典 |
|---|---|---|
| ショート・漏電 | 端子台に結露した水が溜まると、水滴は電気を通しやすいため、ショートや漏電が起き、誤作動・故障につながる | 日東工業 熱関連コラム |
| 錆・カビ → 接触不良 | 電線・端子・電子基板の導電部が腐食すると接触不良になる。錆もカビも湿度60%RHを超えると発生しやすい。キャビネットが錆びると、内部機器を守る機能を維持できなくなる | 日東工業 熱関連コラム |
| 腐食の急加速 | 鉄は湿度50%、銅やコバルトは湿度60%を超えると腐食速度が急加速する | オリムベクスタ「結露・湿度から守る!ヒーターの活用法」 |
| 絶縁抵抗の低下 | 湿度の影響で絶縁抵抗値が下がり、機器の故障や漏電による感電の危険性が高まる | 日東工業 熱関連コラム |
| 基板のショート | 結露から発生した水滴でショートする場合と、結露と埃の付着を繰り返してショートする場合がある | オムロン 制御盤BASIC Vol.1 |
| リレーの絶縁不良・トラッキング | 周囲温度の急変による結露は、絶縁不良やトラッキングを招く | オムロン『リレー 共通の注意事項』 |
目安として、電子機器の使用湿度上限は一般的に85%RHとされています(出典: 日東工業 熱関連コラム)。ただし上の表のとおり、錆やカビはそれより低い湿度から進み始めます。目に見えない湿気が、絶縁劣化や錆を徐々に進めていく点が厄介なところです(出典: 日東工業 熱関連コラム)。
導電部の腐食による接触不良は、端子台まわりでも起きます。端子台への接続の基本は端子台の接続手順:締め付けトルクと「抜けない配線」のコツで整理しています。また、湿気の多い盤でリレーの動きが怪しいときの切り分けはリレー故障の調べ方|動かない・カチカチ・戻らない症状別の原因とテスターでの確認手順が参考になります。
原因①:水分の入り口|底面・配線ピット・基礎
結露対策の前に、まず水分がどこから入ってきているかを見ます。メーカーのコラムに載っている事例を、入り口ごとに並べます。
配線ピット・底面の引込口
自立型制御盤を配線ピットの上に設置したところ、ピットから水や湿気が入り、盤内に結露した事例があります。屋内でも、底面の引込口から湿気が入る箇所があると、温度条件によって結露しうるとされています。対策は、底面の入出線部をコーキングすることです(出典: 日東工業 熱関連コラム)。
基礎と基台のすき間(ふさいで水を閉じ込めた例)
屋外盤で、コンクリート基礎と基台(チャンネルベース)の間をコーキングしたら、盤内に水が溜まったという事例も紹介されています。対策として挙げられているのは次のとおりです(出典: 日東工業 熱関連コラム)。
- 基礎に水抜き孔や溝を設ける
- 水抜き孔や溝を設けないなら、基礎と基台の間をコーキングしない
- 基礎の上面に前後左右の勾配をつける
良かれと思ってふさいだ結果、入った水の逃げ道までなくなってしまった例です。ふさぐ前に、水の出口を作る。これが入り口対策の順番です。
ゲタ基礎・架台、ビルの影、屋上
屋外キュービクルについては、置き場所に関する注意も挙がっています(出典: 日東工業 熱関連コラム)。
- ゲタ基礎・架台:降雨時など外気が高湿度のときに、多量の湿気が入るおそれがある
- ビルの影になる場所:昼夜の温度変化が大きく、結露が起きやすい可能性がある
- ビル屋上:ビル風の吹き上げに注意
同じ盤でも、置く場所が変われば水分の入り方も冷え方も変わります。結露が出た盤は、盤の中だけでなく足元と周囲も見ておくと原因に近づけます。
原因②:盤の中が冷える|停止・夜間・クーラー
もう一つの原因は、盤の中の温度が下がることです。前の章の「3つのタイミング」とつながる話ですが、原因として見ると次の3つに整理できます。
- 設備停止中:機器の発熱が止まり、気温との差で結露が発生する(出典: オムロン 制御盤BASIC Vol.1)
- 夜間〜朝方:外気温の低下に合わせて盤内温度も下がる。日中25℃の盤内が深夜5℃まで下がる例は、結露の計算例そのものです(出典: オリムベクスタ「結露・湿度から守る!ヒーターの活用法」)
- 盤用クーラー:盤内を冷やす機器なので、使えば冷えた部分で結露が生まれる
盤用クーラーは、熱対策の中で外気温より低く冷やせる選択肢ですが、冷やすということは結露が生まれるということでもあり、ドレン(結露水)の処理という新しい宿題が付いてきます。熱対策の全体像とクーラーの位置づけは盤内温度が上がる原因と対策まとめ|換気ファン・熱交換器・盤用クーラーの選び方で解説しています。熱対策と結露対策は、同じ盤の温度管理の表と裏です。
対策の考え方|「入れない+温める」か「換気で差を縮める」か
メーカーのコラムに挙がっている対策を、ねらいごとに並べます(出典: 日東工業 熱関連コラム/オムロン 制御盤BASIC Vol.1)。
| 対策 | ねらい | 向いている場面 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 密閉化・コーキング | パッキンやシーリング材で隙間をなくし、外からの湿気の侵入を抑える | 配線ピットの上・底面の引込口がある盤。外気を入れたくない環境 | 中の空気の水分は残るので、ヒーター・除湿と組み合わせる。基礎と基台の間は、水の出口を作らずにふさがない |
| 盤用ヒーター | 盤内温度を露点温度以上に保つ。温度センサーと連携させるとより効果的 | 換気が難しい盤。停止中・夜間に冷える盤 | 湿度スイッチ・温度スイッチで「必要なときだけ」動かす(次の章) |
| 盤用除湿器・除湿剤・調湿材 | 盤内の湿度を管理する | 換気が難しい盤。密閉した盤 | 容量や交換の目安は、メーカーのカタログで確認 |
| 換気扇付ルーバー・ルーバー | 換気して、盤内外の温湿度差を縮める | 外気を入れてよい盤。屋外盤で外気温が急に下がる場所 | フィルター付きなら塵埃の侵入も防げる。フィルターの保守とセットで考える |
| 水抜き孔 | 結露しても、水が外へ抜けるようにする | 屋外盤(メーカーの屋外盤の事例) | 位置や大きさは、キャビネットメーカーの資料で確認 |
| 基板の防湿コーティング | 基板がショート故障する可能性を軽減する | 基板を持つ機器が結露にさらされる盤 | コーティング品・改造対応になる。詳細はメーカーに確認 |
| 湿度センサーでの監視 | 盤内の湿度を監視し、記録・分析して予防につなげる | 結露の起きる時間帯や季節をつかみたい盤 | 監視そのものは結露を止めない。他の対策の効き目を確かめる材料にする |
並べてみると、対策は大きく2つの系統に分かれます。
- 入れない+温める(除湿する):密閉・コーキングで湿気の侵入を抑え、ヒーターで露点温度以上に保つか、除湿器などで湿度を下げる
- 換気で差を縮める:換気扇付ルーバー・ルーバーで盤内外の温湿度差を縮める
屋外盤の事例では、対策の順番として「換気口またはファンで強制換気 → 換気が難しければヒーターや除湿器」が示され、あわせて自立形の入出線部のコーキングと、下面の水抜き孔が挙がっています(出典: 日東工業 熱関連コラム)。
どちらの系統が合うかは、盤の置かれた環境で決まります。たとえば粉塵が多い場所なら、フィルター付きの換気にするか、密閉してヒーターで温めるか、という選び方になります。熱対策の側で換気ファンを付けている盤なら、その換気が結露対策にもなっているかを一緒に見直すと、手の打ち方が見えてきます。
ヒーターは湿度スイッチ・温度スイッチで「必要なときだけ」
盤用ヒーターで盤内温度を管理すると、相対湿度も管理できます。そしてスイッチと組み合わせて必要なときだけ動かすので、省エネにもなります(出典: オリムベクスタ「結露・湿度から守る!ヒーターの活用法」)。使われるスイッチは2種類です。
| スイッチ | ヒーターをONにするとき | ヒーターをOFFにするとき |
|---|---|---|
| 湿度スイッチ | 盤内の湿度が、設定した湿度に達したとき | 湿度が設定値から約4%下がったとき |
| 温度スイッチ(NC接点) | 温度が設定温度から4℃下がったとき | 盤内の温度が設定温度まで上昇したとき |
出典: オリムベクスタ「結露・湿度から守る!ヒーターの活用法」
湿度スイッチは「湿ってきたら温める」、温度スイッチは「冷えたら温め、設定温度まで上がったら止める」役割です。温度スイッチがNC接点なのは、温度が低い間は接点が閉じていてヒーターに通電し、設定温度まで上がると開いて切る、という動きになるためです。
設定湿度・設定温度を何にするかは、盤の置かれた条件と、使うヒーター・スイッチのメーカーの資料で決めます。ヒーターの容量も同じく、メーカーのカタログで確認してください。この記事では推奨値は挙げません。
結露しても逃がす|水抜き孔と基礎の勾配
入れない・冷やさない対策に加えて、それでも結露したときに備え、結露した水を盤の外へ逃がす手当ても組み合わせます。メーカーのコラムに挙がっているのは次の2つです(出典: 日東工業 熱関連コラム)。
- 盤の下面の水抜き孔:結露しても、水が外へ抜けるようにする
- 基礎の水抜き孔・溝と、基礎上面の前後左右の勾配:基礎と基台のまわりに水を溜めない
「原因①」の章で見たとおり、基礎と基台の間をコーキングして水を閉じ込めた事例があります。逃がす手当ては、ふさぐ対策とセットで考えるものです。水の入り口をふさぐときは、同時に水の出口がどこにあるかを確かめておきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 制御盤の結露の原因は何ですか?
A. 盤内の空気が冷えて相対湿度が上がり、空気が水蒸気を含みきれなくなることで起きます。盤では、夜間から朝方の冷え込み、設備停止中に機器の発熱が止まったとき、外気温が急に下がったときなど、盤が冷える瞬間に起きやすくなります。底面の引込口や配線ピット、基礎まわりから湿気や水が入ることも原因になります。
Q2. 制御盤の結露は冬だけ気を付ければいいですか?
A. 冬だけではありません。冬季や、夜間から朝方にかけて気温が急に下がるときに起きる冬型結露のほかに、雨天や梅雨など周囲の湿度が高いときに、盤内の冷たい機器やキャビネット表面に起きる夏型結露があります。季節の変わり目や、気温・湿度の変化が大きい時期にも起きやすいとされています。
Q3. 結露対策は換気と密閉のどちらがいいですか?
A. 盤の置かれた環境で決まります。換気は盤内外の温湿度差を縮める方法で、フィルター付きなら塵埃の侵入も防げます。密閉は外からの湿気の侵入を抑える方法で、ヒーターや除湿器で中を温める・除湿する対策と組み合わせます。メーカーの事例では、換気口またはファンで換気し、換気が難しければヒーターや除湿器、という順番が示されています。
Q4. 結露した制御盤はすぐに電源を入れていいですか?
A. そのまま通電しないでください。結露によって生じる水滴は電気を通しやすく、ショートや漏電につながります。濡れた盤内に手を入れる前に、盤の電源を切り、検電で活線でないことを確かめます。そのうえで乾かしてから、必要なら絶縁抵抗を確認します。
まとめ
- 結露は、温度が下がって相対湿度が100%を超えると起きる。日中25℃・65%の盤内が深夜5℃まで下がると、8.19g/m3が結露になる計算例がある
- 盤で起きやすいのは盤が冷える瞬間:夜間〜朝方の冷え込み・冬(冬型)、設備停止中、外気温の急低下・季節の変わり目。梅雨・雨天の夏型結露もある
- 結露はショート・漏電、錆・カビによる接触不良、絶縁抵抗の低下、基板のショート、リレーのトラッキングにつながる。錆・カビは60%RHを超えると発生しやすい
- 先に水分の入り口を見る:配線ピット・底面の引込口・基礎まわり・ゲタ基礎。屋内盤でも起きる
- 対策は「入れない+温める(除湿する)」か「換気で差を縮める」。どちらが合うかは置き場所で決まる。メーカーの事例は「換気 → 難しければヒーターや除湿器」の順
- ヒーターは湿度スイッチ・温度スイッチで必要なときだけ動かす。設定値と容量はメーカーの資料で決める
- ふさぐ前に水の出口を作る。下面の水抜き孔、基礎の水抜き孔・溝・勾配で、結露しても逃がす
- 結露した盤にそのまま通電しない。手を入れる前に電源を切って検電し、乾かして、必要なら絶縁抵抗を確認
