制御設計とはどんな仕事か。装置1台ができるまでの7工程と、各工程で使う知識
はじめに:制御設計とは「装置1台を動くまで持っていく仕事」
「制御設計とはどんな仕事か」。求人票の職種名だけを見ても中身が分からないので、調べて辿り着く人が多いのだと思います。自分も業界に入る前は、何をする仕事なのか具体的には分かっていませんでした。
この記事では、言葉の定義から説明するのではなく、装置1台ができるまでの流れで答えます。自分がいる会社では、装置1台を仕上げるまでの工程が次の7つに分かれています。
- 見積
- ハード設計
- 手配(盤組・部材)
- ソフト設計製作
- 配線工事準備
- 配線工事
- 試運転・立ち上げ
自分は自動装置(自動機)のメーカーにいて3年目です。担当は制御盤設計・CAD製図・PLCソフト・GOTソフト・配線工事・試運転・立ち上げで、工程でいうとハード設計から立ち上げまでを持っています。18歳からFA(ファクトリーオートメーション)の業界にいて、前職はFAのソフト会社。タッチパネル(GOT)の画面制作から入りPLCのソフトも担当して4年いたので、ソフトから入ってハード側を後から覚えた側の人間です。
以下、7工程を順に「何をするか」と「この工程で出てくる言葉・知識」に分けて書いていきます。勉強の順番を考えるときの地図として使えるように、言葉ごとにサイト内の該当記事へのリンクを置いておきます。なお年収の推移や1日の過ごし方そのものはFAエンジニアの年収は転職でどう変わったか。制御設計に移って3年の実例にまとめているので、そちらが知りたい人は先にどうぞ。この記事は「何をする仕事か」に絞ります。
最初に断っておくと、これは1社の例であり、1人の担当範囲の話です。工程の切り方も呼び方も会社によって変わります。
工程1:見積
装置の引き合いに対して、制御側で何がどれだけ必要になるかを見通す工程です。自分の担当はこの次のハード設計からなので、見積の中身そのものは書けません。
積み方の中身は会社や案件ごとに違うので、手順としては書きません。ただ、後ろの工程を知らないと数字が出しにくい工程だろうとは思います。これは自分が積んでいるわけではないので、想像の範囲として読んでください。
この工程で出てくる言葉
装置の仕様と、そこから決まる機器の構成です。つまり知識としては、次の「ハード設計」と「手配」で出てくる話がそのまま前倒しで要る、という作りになっています。制御設計の勉強を始めるなら、見積から覚えようとするより、下のハード設計側から入ったほうが素直だと思います。
工程2:ハード設計
制御盤の中身を決めて、図面にする工程です。自分の担当では、制御盤設計と制御盤のCAD製図がここに入ります。盤の中にどの機器をどこに置くかを示した盤内配置図も、この工程で描きます。
この盤内配置図が、自分の会社で新人がまず盤組(制御盤の組立)を経験する理由になっています。盤組をやっていないと配置図が描けないのです。機器の大きさや配線を通すスペースを手で知らないと、図面の上では収まっているのに実物では収まらない配置を描いてしまう。だから手で組む側を先に経験させる、という考え方です(1社の例)。
この工程で出てくる言葉
- 保護等級(IP):盤をどこに置くか(屋内か屋外か、粉塵や水がかかるか)で、盤に求められる保護性能が変わります。IPコードの2桁が何を保証しているのか、IP44とIP54とIP65で何が違うのかはIP保護等級 一覧表|IP44・IP54・IP65・IP67の違い【JIS C 0920】に一覧と試験条件をまとめています。
- 容量の概算:盤に入る負荷の電力を押さえないと、電源も遮断器も決まりません。電圧・電流・力率から単相/三相の電力(W)を出すだけなら電力(W)計算ツール|ワット・消費電力を単相/三相で自動計算【電工対応】で足ります。
- 遮断器の選定:盤の入口に何を付けるか、という話です。配線用遮断器(MCCB)と漏電遮断器(ELCB)は検知する対象が違うので、単純な上位互換ではありません。選び分けの考え方は配線用遮断器(MCCB)と漏電遮断器(ELCB):制御盤での選び分けに書いています。
工程3:手配(盤組・部材)
図面が固まると、盤を組む手配と、盤に載せる部材の手配に進みます。盤組は、自分の会社では今は外注に出しています。手配そのものを自分が回しているわけではないので、ここで書くのは「何が決まっていないと先に進めないか」だけにします。
手配の工程で効いてくるのは、機器を型式まで落とせるかです。ハード設計で「ここは電源」「ここは接触器」と決めたものを、カタログの型式に確定させないと発注ができません。同じ用途の機器でも、選定の軸が機器ごとに違うので、そこを知っているかどうかで手が止まる時間が変わります。
この工程で出てくる言葉
- パワーサプライ:ACをDC24Vに変える電源です。容量だけでなく、突入電流や出力保持時間、負荷率といったカタログの数字の読み方まで含めてパワーサプライとは?仕組みと選び方|突入電流・出力保持時間の読み方までにまとめています。
- 電磁接触器(MC):モーターのような大きい負荷をON/OFFする機器です。コイル電圧・主接点容量・補助接点数という3つの軸で選ぶことになるので、その順番は電磁接触器(MC)とは?仕組みとコイル電圧・主接点容量・補助接点の選び方を見てください。
- 電線:電線は種類で呼び名が変わり、外装があるかどうかで施工方法まで変わります。IV線とVVFの違いのような基本は絶縁電線とは?IV線・VVFの違いと使い分けをわかりやすく解説【電工対応】で押さえられます。
工程4:ソフト設計製作
装置を動かすソフトを作る工程です。自分の担当では、PLCのプログラムとタッチパネル(GOT)の画面の両方がここに入ります。ソフトだけを外に出すのではなく、同じ人がハードも持っているので、自分で描いた図面に対して自分でソフトを書く形になります。
「シーケンス制御の仕事」として求人に出ているのは、だいたいこの工程のことだと自分は理解しています。ただ、自分の会社ではここで終わりではなく、この後の配線工事と立ち上げまで同じ人が持ちます。
この工程で出てくる言葉
PLCのプログラムはメーカーごとにソフトが違い、自分は三菱の GX Works3 を使うことが多いです。ラダーで何をするにも命令語を選ぶところから始まるので、「この処理はどの命令か」を逆引きできるように【GX Works3】命令一覧・早見表(iQ-R)|ラダー命令語の使い方まとめをカテゴリ別の早見表にしてあります。接点・タイマ・データ転送・比較・算術あたりが使えるようになると、簡単なものは書けるようになります。
自分の場合、前職のソフト会社ではこのソフト設計製作の部分だけを4年やっていました。逆に言えば、この工程はソフト専業の会社でも成り立つくらい、ひとまとまりになっている工程です。
工程5:配線工事準備
工程の名前のとおり、配線工事を始められる状態にするための準備です。ここで何をどこまで用意するかは会社や案件で変わる部分が大きいので、自分のやり方を一般論として書くのは避けておきます。
知識の地図としては、この工程に固有の新しい知識はあまり出てこないと感じています。ひとつ前までの工程で確定した図面と部材を、次の配線工事で使える形に揃える工程なので、要るのは前の工程の内容を自分が把握していることです。工程をまたいで同じ人が持つ形だと、ここが軽くなります。
工程6:配線工事
盤と装置を、図面どおりに繋いでいく工程です。自分の担当範囲にはこの配線工事も入っています。設計だけをする仕事だと思って入ると、ここで驚くかもしれません。
この工程で出てくる言葉
- 圧着端子・フェルール端子:より線をそのまま端子台に噛ませるのではなく、先端に端子を圧着してから繋ぎます。筒状のフェルール端子(棒端子)については、選び方と圧着のしかた、よくある失敗をフェルール端子の圧着方法と選び方|現場での活用ポイントを解説にまとめています。
- ダクト・結束・整線:配線は繋がれば終わりではなく、後から追える状態になっているかで保守のしやすさが変わります。配線が乱れる原因と、ダクトの使い方・結束・整線の現場ルールは制御盤の配線を整理する方法|ダクト・結束・整線の現場ルールを解説に書いています。
この工程の作法は会社ごとに違う部分があり、自分も入社してしばらく盤組を担当していた時期に、先輩に聞きながら覚えました。
工程7:試運転・立ち上げ
装置を実際に動かして、図面とソフトのとおりに動くかを確かめ、動くところまで持っていく工程です。制御設計の仕事で現場に出るのは、主にここです。
出張は月5日ほどで、日帰りが多いです。客先の夜勤に立ち会うことがたまにありますが、自社に夜勤はありません。「制御設計は現場を飛び回る仕事」というイメージを持たれることもありますが、自分の場合は社内での設計のほうが時間としては長いです。
この工程で出てくる言葉
思ったとおりに動かないときに、原因がハードなのかソフトなのかを切り分けることになります。その最初の道具がテスターで、盤の中は触れる線と触れてはいけない線が同居しているので、当て方そのものに作法があります。電圧測定と導通チェックをどこにどう当てるのか、レンジの取り違えで何が起きるのかはテスターの使い方【制御盤編】|電圧測定と導通チェックを盤の中でどう当てるかにまとめました。
7工程を同じ人が持つということ
ここまで7工程を分けて書きましたが、自分の会社では工程ごとに担当が替わるのではなく、同じ人が案件を続けて持ちます(1社の例)。ハード設計をした人が、そのままソフトを作り、配線をして、現場で立ち上げるところまで行く形です。
この形だと、前の工程の経験がそのまま次の工程に効いてきます。分かりやすい例が、さきほどの「盤組を知らないと盤内配置図が描けない」という話です。逆に、立ち上げで苦労すると次の案件のハード設計の見方が変わる、というのも自分の実感です。工程を分けずに持つのは負荷も大きいのですが、各工程が互いの理由になっているのは自分としては納得がいっています。
働き方の面で言うと、複数の案件を同時に進めることになります。ある案件が配線工事のとき、別の案件はハード設計、ということが普通に起こります。出勤は9:00、退勤は平均で21:00くらいで、忙しくない時期は18:00に帰れる日もありますが、基本的には忙しいです。この辺りの実感はFAエンジニアの年収は転職でどう変わったか。制御設計に移って3年の実例のほうに詳しく書いています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 制御設計とはどんな仕事ですか?
A. 装置1台を動く状態にするまでの、制御側を受け持つ仕事です。自分の会社では見積、ハード設計、手配(盤組・部材)、ソフト設計製作、配線工事準備、配線工事、試運転・立ち上げという7つの工程で進み、自分の担当はハード設計から立ち上げまでです。これは1社の例で、会社によって分け方も担当範囲も変わると思います。
Q2. シーケンス制御の仕事とは何をするのですか?
A. 求人で「シーケンス制御」と書かれている仕事は、自分の実感では7工程のうちソフト設計製作にあたる部分が中心です。PLCのプログラムと、タッチパネル(GOT)の画面の両方を作ります。ただし自分の会社ではソフトだけで終わらず、同じ人が配線工事や試運転・立ち上げまで持ちます。
Q3. 制御設計は設計だけをする仕事ですか?
A. 自分の場合は設計だけではありません。配線工事や試運転・立ち上げまで担当します。とはいえ実態は社内での設計がメインで、出張は月5日ほど、しかも日帰りが多いです。客先の夜勤に立ち会うことがたまにあります。
Q4. 制御設計はどの工程から覚えますか?
A. 自分の会社では、新人はまず盤組(制御盤の組立)を経験します。盤組を知らないと、ハード設計で盤内の配置図が描けないからです。これも1社の例ですが、前の工程の経験が次の工程に効くという順番は変わらないと思っています。
まとめ:7工程の地図があれば、何を勉強するかが決まる
- 制御設計は装置1台を動くまで持っていく仕事。自分の会社では見積・ハード設計・手配・ソフト設計製作・配線工事準備・配線工事・試運転/立ち上げの7工程
- ハード設計で要るのは盤の知識。保護等級、容量の概算、遮断器の選び分け
- 手配で要るのは機器を型式まで落とす力。パワーサプライ、電磁接触器、電線
- ソフト設計製作はPLCとGOTの両方。求人の「シーケンス制御」は主にこの工程
- 配線工事と試運転・立ち上げも担当範囲。設計だけの仕事ではなく、出張は月5日ほどで日帰りが多い
- 同じ人が工程をまたいで持つので、前の工程の経験が次に効く(1社の例)
「制御設計とは何か」を一言で言い切るより、この7工程のどこの話をしているのかで見たほうが、仕事の中身は掴みやすいと思っています。勉強する側も、全部を一度に覚えるのではなく、自分が今いる工程の言葉から埋めていくほうが早いはずです。
未経験からこの仕事に入れるのかという話は制御設計は未経験から入れるのか。未経験で入った人が自分より上にいる話【1社の実例】に、年収と1日の働き方はFAエンジニアの年収は転職でどう変わったか。制御設計に移って3年の実例に分けて書いています。どちらも1人・1社の例として読んでください。
この仕事のきつさの面は「制御設計はやめとけ」と言われる理由を、3年目が実際のきつさから書く、資格については制御設計に資格は必要か。入口では問われなかったが、入ってから効いたことに分けて書いています。
