停電・瞬停の後に装置が立ち上がらない時の確認順|壊れたのか安全に止まっているのかを分ける

復電直後は、装置が予告なく動き出す可能性があります
停電から復帰した装置は、途中で止まった動作の続きを始めることがあります。可動部に人がいない、手や工具が入っていないことを確認してから電源を入れてください。また、原因が分からないまま繰り返し電源を入れ直すのは、機器を傷める行為です。この記事は「入れ直す前に何を見るか」の話です。

停電のあと、あるいは一瞬だけ電気が切れた(瞬停)あとに、装置が立ち上がらない。よくあるのは、原因を確認しないまま何度もブレーカを入れ直してしまい、状況が分からなくなるパターンです。

まず持っておくべき前提があります。復電後に動かないのは、多くの場合「壊れた」のではなく「安全側に止まっている」だけです。制御盤は、停電したあとに勝手に動き出さないよう意図的に設計されています。つまり止まったままなのは、しばしば設計どおりの正常な動作です。この視点があるかどうかで、探す場所がまったく変わります。

この記事では、復電後の装置を上流から下流へ順に確認していく流れを整理します。

入れ直す前に|「何が落ちたか」を先に見る

電源を入れ直すと、落ちた痕跡が消えます。トリップした表示、点灯していたアラーム、途中で止まった工程——これらは原因を教えてくれる情報なのに、リセットすると失われます。最初の1回は、入れ直す前に見て回る時間を取ってください。

見るのは次の3つです。

  • 遮断器・ブレーカが落ちていないか。落ちているなら、それは停電の結果ではなく独立した原因かもしれません。停電と同時に発生した事象なのか、停電のせいで落ちたのかで話が違います。トリップの見分け方はブレーカがトリップする原因と調査手順にまとめています。
  • サーマルリレーが動作していないか。復電時の突入や、停電中に止まったモーターの状態によって動作していることがあります。サーマルリレーがトリップした時の対処のとおり、リセット前に原因を見る必要があります。
  • アラーム表示・エラー履歴。PLCやインバータ、サーボアンプは、電源が切れてもエラー内容を記憶しているものがあります。消す前に控える。PLC側の見方はPLCのCPUエラー(ERR LED)の確認と解除手順を参照してください。

リセットは情報を消す操作でもある。「戻す」前に「見る」。順番を逆にすると、二度目が起きるまで原因が分からない。

いちばん多い理由|自己保持が解けている(これは正常)

確認して何も落ちていないのに動かない。この場合、多くは自己保持回路が解けているだけです。

起動ボタンを押すと運転状態を保持し、停止ボタンで解除する——という自己保持の仕組みは、電気が切れれば当然に解除されます。そして復電しても、自分から元に戻ることはありません。誰かが起動ボタンを押すまで止まったままです。

これは不具合ではなく安全のための設計です。もし自己保持が停電を越えて残っていたら、復電した瞬間に装置が動き出します。停電中に「止まっているから」と手を入れていた人がいたら、極めて危険です。止まったままでいてくれることに意味があります。

したがって、この場合の対処は「原因を探す」ことではなく、正しい手順で起動し直すことです。装置によっては、原点復帰の操作や、初期化の操作が先に必要になります。回路としての自己保持の考え方は電磁接触器の補助接点の使い方、PLCプログラム側での書き方は自己保持回路のラダー図での書き方で扱っています。

「復電したら自動で動くようにしてほしい」と言われたら
現場からこの要望が出ることがあります。安易に応じてはいけません。停電の間に人が装置に近づいている可能性があり、無人での自動復帰は挟まれ事故に直結します。どうしても必要な場合でも、警報を鳴らしてから動く、原点位置でのみ復帰する、といった条件を設計として付けるべき話で、自己保持を跨がせるだけで済ませてよい変更ではありません。

瞬停が厄介な理由|PLCは生きているのに現場は落ちている

数十ミリ秒だけ電圧が下がる、いわゆる瞬停は、完全な停電より分かりにくい症状を出します。人は停電に気づいていないのに、装置だけがおかしくなるからです。

鍵になるのは、機器によって「電気が切れてから落ちるまでの時間」が違うことです。

  • PLCの電源(パワーサプライ)には出力保持時間があります。入力が切れても、内部のコンデンサに溜まった電気でしばらく出力を維持します。だから短い瞬停ではPLCは止まらず、プログラムは動き続けます。
  • 電磁接触器(MC)のコイルは、電圧が下がるとすぐに開放されます。保持する仕組みが無いので、瞬停でも落ちます。

この差から、瞬停特有の状態が生まれます。PLCは「モーターを動かしている」つもりで出力を出し続けているのに、MCが落ちて実際には止まっている。あるいは、自己保持していたMCが落ちたまま復帰せず、PLC側は異常と認識していない。プログラム上は正常、現場は停止、という食い違いです。

この症状に心当たりがあるなら、次のように確認します。

  • PLCの出力(Y)と、MCの実際の動作が一致しているかを見る。出力はONなのにMCが入っていないなら、この筋です。
  • MCの補助接点をPLCに戻しているかを見る。戻していれば「指令したのに入っていない」をPLCが検出できます。戻していない設計では、そもそも気づけません。
  • 他の装置も同時刻におかしくなっていないかを聞く。複数台が同時なら、装置の故障ではなく受電側の事象です。

パワーサプライの出力保持時間そのものについてはパワーサプライとは?仕組みと選び方|突入電流・出力保持時間の読み方までで扱っています。瞬停が頻発する現場では、この値が実際の対策の材料になります。

復電の手順|上流から下流へ、1つずつ

確認が済んだら投入します。ポイントはまとめて入れないことです。一度に入れると、どこで問題が起きたか分からなくなり、突入電流も重なります。

  • ① 受電・主幹から順に、上流から入れる。入れた直後に落ちる場合、その区間より下流に原因があります。1つずつ入れていれば、落ちた瞬間に犯人が分かります。
  • ② 制御電源を入れ、盤の表示を見る。この段階でPLCが正常に立ち上がるか、エラーが出ていないかを確認します。
  • ③ 動力側を入れる。ここで初めてモーターやヒータに電気が行きます。
  • ④ 装置を初期状態にしてから起動する。原点復帰や初期化の操作が用意されているなら、それを先に行います。

この「上流から1つずつ」は新規盤の試運転と同じ考え方で、制御盤の試運転チェックリストにも通じます。停電復旧は、規模の小さい試運転だと思うと手順を組み立てやすくなります。

投入順序が決まっている機器に注意

インバータやサーボアンプには、制御電源と主回路電源が分かれているものや、電源投入から使用可能になるまで一定の待ち時間が必要なものがあります。順序や待ち時間の指定は機種ごとに違うので、マニュアルで確認してください。順序を守らないと、アラームが出て立ち上がらないことがあります。「毎回同じアラームで立ち上がらない」なら、順序を疑う価値があります。

PLC側で見るところ|どこまで覚えているか

復電後に装置が中途半端な状態で止まる場合、PLCが停電前の状態をどこまで保持しているかが関係します。

  • 保持されるデバイスと、されないデバイスがあります。電源を切っても内容が残るように設定されたデバイスは、停電前の値のまま復帰します。工程の進行状況をそうしたデバイスで管理している装置では、「途中の工程から再開しようとして動けない」という状態になります。この場合は初期化・原点復帰の操作が必要です。
  • 保持のためのバッテリが切れていると、内容が失われます。停電するまで気づかず、復電して初めて発覚することがあります。バッテリ警告が出ていたのに放置していた、というのは典型的な流れです。交換の考え方はPLCのバッテリ交換の手順と注意点にまとめています。
  • 非常停止が押されたままになっていないか。停電と前後して誰かが押した可能性があります。復帰しない場合は非常停止が復帰しない時の切り分け手順を参照してください。

まとめ

停電・瞬停のあとに装置が立ち上がらないときは、壊れたのか、安全に止まっているのかを先に分けます。多くは後者です。

  • 入れ直す前に見る。ブレーカ・サーマル・アラーム履歴は、リセットすると消える情報
  • 自己保持が解けているのは正常。復電で勝手に動き出さないための設計であり、対処は「正しい手順で起動し直す」こと
  • 「復電で自動起動にして」は安易に受けない。停電中に人が近づいている可能性がある
  • 瞬停ではPLCは生き残り、電磁接触器だけが落ちる。プログラム上は正常・現場は停止、という食い違いが起きる
  • 投入は上流から1つずつ。まとめて入れると原因が分からなくなる
  • 復電後に中途半端な状態で止まるなら、保持デバイスと原点復帰を見る

停電は装置にとって「予告なく途中で止められた」状態です。壊れた場所を探す前に、どこまで戻せば安全に再開できるかを考えるほうが、結果的に早く復旧します。